Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.49
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2010  49
Journal Club
くも膜下フェノールブロックと仙骨部神経根高周波熱凝固術が
著効した旧肛門部痛の1例
大阪市立大学医学部附属病院 麻酔科・ペインクリニック科  舟尾 友晴

舟尾友晴、長谷一郎、小谷百合子、清水雅子、中村武人、高橋陵太、宮田妙子、浅田章. くも膜下フェノールブロックと仙骨部神経根高周波熱凝固術が著効した旧肛門部痛の1例.Palliative Care Research Vol. 5 (2010) , No. 2 pp.314-316

【緒言】
 直腸がんなどの骨盤周辺のがん患者の増加と治療法の進歩により、人工肛門造設術や尿路変更術を受ける患者も増加している。これらの症例において骨盤内再発により旧肛門部や会陰部の難治性疼痛に苦しむ例は少なくない。このような悪性腫瘍由来の疼痛治療として、フェノールグリセリンによるくも膜下サドルブロックは、 比較的安全に長期間の鎮痛効果が得られる。しかし第3仙髄神経より高位の神経が関与する疼痛については、その効果は一定しない。そこでくも膜下フェノールブロックに仙骨部神経根高周波熱凝固術を併用することで、非常に良好な鎮痛を得た直腸がん術後の旧肛門部痛の1例を経験したので報告する。
【症例】
 61歳、男性。直腸がん再発の旧肛門部の疼痛に対し、オピオイドなどの鎮痛薬が投与されていたが、 疼痛コントロールが困難な状態であった。これに対しくも膜下フェノールブロックを施行することでオピオイドを中止できる程度に疼痛は軽減した。しかし数週間後、第3仙髄神経の支配領域である旧肛門深部の疼痛が増悪してきたため、仙骨部神経根高周波熱凝固術を施行したところ疼痛の消失が得られた。
【考察】
 フェノールグリセリンによるくも膜下サドルブロックは本来、第4、5仙髄神経と尾骨神経のブロックであり、0.2〜0.3mlのフェノールグリセリンを注入することで下肢の運動障害を起さず、表在性の旧肛門部痛を軽減させることが可能である。しかし、より上位の仙髄神経が関与する旧肛門深部の疼痛に対しては、フェノールグリセリン注入量を増量しても効果は一定せず、下肢運動障害の危険性も増す。第3仙髄神経より高位の神経が関与すると考えられる疼痛には、疼痛の再現性を確認できる仙骨部神経根高周波熱凝固術を検討すべきである。
【結論】
 直腸がん術後の骨盤内再発における旧肛門部の疼痛はくも膜下フェノールブロックのみでは疼痛管理に難渋することがあるが、仙骨部神経根高周波熱凝固術を併用することで疼痛緩和を得られる可能性がある。
【コメント】
 本症例は坐位がとれない生活を約1年過ごしており、もう少し早い時期での神経ブロックがQOLの改善に繋がったのではないかと思われる。このことからも悪性腫瘍を取り扱う診療科の医師に、このような神経ブロックの存在を認識してもらう必要性を感じた症例であった。

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