Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.49
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2010  49
Journal Club
がん患者の体脂肪量が使用済みフェンタニルマトリックス型パッチの
残存量に及ぼす影響
岩手医科大学 薬学部臨床薬剤学講座  千葉 健史

千葉健史、木村祐輔、高橋宏彰、平舩寛彦、長澤佳昭、森薫、米澤裕司、菅原敦子、川口さち子、川村英伸、西塚哲、工藤賢三、藤原邦彦、池田健一郎、若林剛、高橋勝雄.がん患者の体脂肪量が使用済みフェンタニルマトリックス型パッチの残存量に及ぼす影響. Palliative Care Research Vol. 5 (2010) , No. 2 pp.206-212

【目的】
 本研究の目的は、がん患者の体脂肪量が使用済みフェンタニルマトリックス型パッチ(以下、MTパッチ)の残存量に影響を及ぼすかどうかを検討し、体脂肪量がフェンタニル皮膚移行量に及ぼす影響について考察することである。
【方法】
 対象患者は、MTパッチを初めて使用するがん疼痛を有する患者とした。MTパッチの貼付部位は上腕部あるいは胸部とし、初回貼付分を使用後に回収した。その後、MTパッチ中のフェンタニル残存量を測定し、その測定値からフェンタニル皮膚移行率を算出した。また、体脂肪量の評価の指標を、上腕三頭筋下皮下脂肪厚(TSF)および体脂肪率(BFR)とし、これら2つの値と算出フェンタニル皮膚移行率との相関性について評価した。
【結果・考察】
 TSFおよびBFRは、フェンタニル皮膚移行率と有意な正の相関をそれぞれ示した(n=13−15)。この結果から、体脂肪量の低い患者ほどフェンタニル皮膚移行率が低下している可能性があることが示唆された。また、がん患者における体脂肪量の低下は、栄養障害とも密接に関連していることから、栄養状態や体脂肪量が低下しているがん患者にMTパッチが投与されている場合には、疼痛強度をより注意深くモニターし、投与量の調節を行う必要があることが考えられた。
【コメント】
 本研究は、がん患者の体脂肪量のみに視点を置いており、フェンタニルの皮膚移行性についても使用済みMTパッチの残存量から予測するにとどまっている。がん患者における体脂肪量の低下は栄養障害とも密接に関連しており、さらに、栄養障害は皮膚乾燥をまねく等、皮膚の状態にも影響も及ぼす。今後、脂肪量の変化を含めた栄養および皮膚状態に関する詳細な評価を行うとともに、これら変化がフェンタニル血中濃度に与える影響について検討する必要がある。

Close