Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.49
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2010  49
Journal Club
四次救急医療を担う大学病院に入院した終末期患者に
提供されるケアの質評価
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野  佐藤 一樹

Walling AM, Asch SM, Lorenz KA, Roth CP, Barry T, Kahn KL, et al. The quality of care provided to hospitalized patients at the end of life. Arch Intern Med. 2010; 170(12): 1057-63.

【背景】
 米国の入院患者は積極的な医学治療を受けているが、救命できなかった場合には、患者は負担の大きい治療を継続しながら辛い症状に苦しみ病院で死亡することが多い。患者の治療方針と症状緩和治療の質の系統的評価が必要である。
【方法】
 四次救急医療を担う大学病院1施設に3日以上入院して死亡した患者496名を対象に診療記録調査を行った。質の評価指標として、Assessing Care of Vulnerable Elders quality indicators (ACOVE QIs)から終末期ケアと鎮痛治療に関する16項目を測定した。ACOVE QIsは、診療記録に記載があることで医療の質が高いと評価する。「もし〜ならば」という条件文に合致した適格患者に対して「〜が診療記録に記載されている」という行為の有無を調べ、適格患者数と達成率を算出して用いる。
【結果】
 対象患者の平均年齢は62±18歳、女性は47%、入院時に終末期疾患であった患者は56%、平均在院日数は24±28日、ICU入室は82%、平均ICU在室日数は18±25日、人工呼吸器の使用は72%、死亡時のCPR実施は15%であった。ACOVE QIsの16項目全体の達成率は70%で、項目別では25〜100%であった。治療方針の達成率では、患者に延命治療差し控えの意向がある場合のその意向の遵守(適格患者N=416,達成率96%)は高かったが、ICU入室時の患者のケアの意向の48時間以内の記載(N=369,46%)、人工呼吸器使用時の治療方針と患者の意向の48時間以内の記載(N=313, 48%)、延命治療差し控えの指示がある場合の患者の意思決定への参加状況の記載(N=191, 40%)は相対的に低かった。疼痛治療の達成率では、中等度以上の疼痛の新規出現時の4日以内の治療の記載(N=150, 95%)や治療効果の記載(N=150, 81%)に比較して、オピオイド使用時の便秘対策(N=460, 61%)は相対的に低かった。呼吸困難の達成率では、昏睡状態でなく人工呼吸器を差し控えた場合の呼吸困難の有無の記載(N=83, 29%)は低かったが、その際のオピオイド・ベンゾジアゼピン・バルビツールのいずれかの使用(N=83, 99%)は高かった。
【結論】
 診療記録調査に基づく評価により、病院で死を迎える患者に対する治療方針と症状緩和治療が不十分であることが明らかとなり、改善の必要性が示唆された。
【コメント】
 ACOVE QIsは診療記録の後ろ向き調査で終末期ケアの質評価ができるため、調査員の人的リソースのみで実施可能である。治療方針や意思決定に関する項目が多いため、本論文のような救急医療での終末期ケアの質評価に特に有用であったと考えられる。ただし、ACOVE QIsの終末期ケアに関する項目の達成率がQOLなどの患者・家族の真のアウトカムを反映するかは不明であり、QIsについてはさらなる検討が必要である。

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