Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.49
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2010  49
Journal Club
早期からの緩和ケアはQOLを改善するだけでなく、生存期間も延長する可能性がある
(転移がある非小細胞肺がん患者を対象とした無作為化臨床試験)
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野
宮下 光令

Early Palliative Care for Patients with Metastatic Non?Small-Cell Lung Cancer. Temel JS, Greer JA, Muzikansky A, Gallagher ER, Admane S, Jackson VA, Dahlin CM, Blinderman CD, Jacobsen J, Pirl WF, Billings JA, Lynch TJ. N Engl J Med 2010; 363:733-742.

【目的】
 転移を伴う非小細胞性肺がんの患者は多くの症状を抱えているだけでなく、終末期にも積極的治療を受けているかもしれない。本研究では診断時からの早期からの緩和ケアの導入が患者のQOLおよび終末期のケアを改善するかについて無作為化臨床試験において検証することを目的とした。
【方法】
 転移を伴う非小細胞性肺がんと診断された患者を「標準的ケア+緩和ケア」と「標準的ケアのみ」にランダム割り付けした。「標準的ケア+緩和ケア」に割りつけられた対象はプロトコルで規定された基準に従う早期からの緩和ケアを受けた。評価指標はQOLと精神症状であり、ベースラインと12週後にQOL尺度であるFACT-Lと抑うつ、不安の測定尺度HADSを測定した。主要評価項目は12週後のQOLの変化とした。終末期のケアに関しては病院の電子記録からデータを抽出した。
【結果】
 151人が無作為割り付けの対象となった。27人が12週までに死亡したが、残りのうち86%である107人のQOLを12週後に評価することが可能であった。早期から緩和ケアを受けた群の患者のほうが有意にQOLが良好だった(FACT-Lで「標準的ケア+緩和ケア」群98.0、「標準的ケア群」91.5、 P=0.03:以下の記述も同順)。早期から緩和ケアを受けた群の患者は抑うつ症状の割合が少なかった(16%、38%、P=0.01)。早期から緩和ケアを受けた群の患者は終末期に積極的治療を受けている割合が少なかったにも関わらず(33%、54%)、生存期間の中央値は有意に長かった(11.6か月、8.9か月、P=0.02)
【結論】
 転移を有する非小細胞性肺がんの患者は早期から緩和ケアを導入することによりQOLと精神症状を改善し、終末期の積極的治療を抑制したにも関わらず、生存期間を延長した。
【コメント】
 本研究は転移の診断時という早期からの緩和ケアの導入がQOLを向上することを無作為化臨床試験により証明することに成功した。それに加えて、終末期のケアの積極的治療の抑制と生存期間の延長の可能性を示した。生存期間の延長に関しては、早期からの看護師主導型の緩和ケア介入の無作為化比較試験であるENABLE IIプロジェクト(Bakitas M, et al. JAMA. 2009; 302(7): 741-9)でも報告されており、さらに異なる介入によりエビデンスが追加されたことになる。ENABLE IIプロジェクトも本研究も生存期間は主要評価項目ではなく事後的に分析されたものであるため、生存期間をエンドポイントにした追試が行われる必要がある。追試が成功すれば、これらの結果は緩和ケアだけでなく臨床腫瘍学の分野にとって画期的な成果となるであろう。緩和ケアの専門家より臨床腫瘍医にとってインパクトが強いかもしれない。介入の内容はNEJMのサイトに掲載されているプロトコルに書かれているものの、実際の患者にどのようなことが実施されたかは明確ではない。臨床で活用されるためには、実際に行われた介入についての記述が重要である。一言に緩和ケアと言っても多様な介入方法が存在する。今後、臨床試験等を通して介入方法の最適化が行われること、生存期間の延長が得られるプロセスの解明されることが期待される。

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