Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.49
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2010  49
口演 優秀演題
がんによる死別が遺族に与える心理的影響の評価
〜複雑性悲劇の実態と遺族ケア利用率との関連〜
演者   神戸松蔭女子学院大学人間科学部 心理学科  大和田 攝子
 この度は、第15回日本緩和医療学会学術大会において「優秀演題賞」の栄誉を賜り、誠にありがとうございます。本学会への参加は今回が初めてで、様子も分からぬまま応募したところ、幸運にもこのような賞をいただき正直驚いております。査読委員の先生方をはじめ、日本緩和医療学会の関係者の皆様には厚くお礼申し上げます。
 今回発表させていただきました「がんによる死別が遺族に与える心理的影響の評価〜複雑性悲嘆の実態と遺族ケア利用率との関連〜」は、平成21〜23年度文部科学省科学研究費補助金の助成を受けて実施された「外傷的事態により近親者を喪った遺族の心理的影響の評価に関する研究」(基盤研究(C) 研究代表者:加藤寛)の一部をまとめたものです。われわれの研究班では、自然災害、事件・事故、病気などさまざまな原因による死別を経験されたご遺族を対象に、悲嘆を測定する尺度の信頼性と妥当性の検討を行うことを目的に研究を進めています。死別に伴う悲嘆は誰にでも生じる正常な反応であり、通常は時間の経過とともに自然に和らいでいきますが、遺族の中には激しい悲嘆が遷延し、重い精神症状や社会的機能の低下などを引き起こす場合があります。このような悲嘆は「複雑性悲嘆(Complicated Grief)」あるいは「遷延性悲嘆障害(Prolonged Grief Disorder)」と呼ばれており、欧米ではDSM-Xなど診断基準化に向け議論が行われています。 今回の調査では、複雑性悲嘆のハイリスク者は全体の約3割を占め、精神科などの専門的ケアやサポートグループを必要とする割合はハイリスク遺族に多いことが明らかになりました。しかしその一方で、これらの社会的資源を必要としない(利用できない)ハイリスク遺族も少なからず存在するため、今後どのようにして支援に繋げていくかが課題となります。
 本研究は3年間にわたって実施する予定で、調査は現在も継続中です。今後はさらに対象者数を増やした上で、遺族の心理的影響を評価する尺度の信頼性・妥当性を検討するとともに、悲嘆の程度に応じた有効な治療的介入の方法について探っていきたいと考えています。今回の受賞を糧に、実際の臨床現場に役立つ死別研究を目指して、さらに精進していきたいと思っております。

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