Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.49
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2010  49
モーニングセミナー3
緩和医療と看護倫理―倫理的葛藤から医療者は何を学ぶのか?―
座長・報告  筑波大学大学院 人間総合科学研究科  水野 道代
 緩和ケアとはどのような医療を提供するものなのかについては、世界保健機関が提示する「緩和ケアの基本的考え方」がある。また看護職には専門職として自らの行為を律するために「看護者の倫理綱領」が定められている。倫理的判断について検討する際のよりどころとしては、適当な「倫理原則」を用いることができる。しかし、個々の事例によっては複数の倫理原則が同時に存在し、どの原則を優先して検討すべきかを判断することは、実際には難しいことである。演者は、臨床では専門職の倫理規定や倫理原則のみでは看護の倫理的状況を解決できないという考えの基に、事例を交えて具体的な対応方法を提供してくれた。
 倫理的感受性を高め、職場における倫理的問題に対応するための力を身につけ、臨床実践に活用できるようにすることを意図した看護倫理研修を演者は企画、運営してきた。そこでは、研修者自身の体験に基づいて、倫理的問題を含む1事例が取り上げられ、1.医学的適応、2.患者の意向、3.QOL、4.周囲の状況といった視点から、倫理的問題が査定され、その対応策と評価を含めて数か月をかけて検討がなされている。事例を取り上げることから学びは始まるという。上記の4つの視点を用いて客観的に事例を分析しはじめると、そこには様々なジレンマが存在することに研修者は気付き始める。なぜそれらが倫理的に問題であるのかという理由が説明できるようになれば、倫理的な対応をするには何を解決しなくてはならないのか、そのためにはどのような行為を遂行する必要があるのかを検討出来るようになるという。
 患者自身や家族の意向を反映しながら看護チームのみでなく、医師やコメディカルと共に打開策が検討され、事態に変化を実感できた時、また共同で問題に取り組んだという経験が日々の看護実践を勇気づけるという演者の言葉に、深い共感を得られるセミナーであった。

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