Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.49
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2010  49
シンポジウム8
治療抵抗性の苦痛に対する鎮静とは
−ガイドライン改訂の要点と今後の課題−
座長・演者・報告   聖路加国際病院 緩和ケア科  林 章敏
 2010年6月20日、「苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン」が「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」と同時に日本緩和医療学会から出版された。この「苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン」は2005年版を改訂したものである。その改訂の要点と今後の課題についてのシンポジウムが正にタイムリーに開かれたので報告する。
 このシンポジウムは、座長、シンポジスト共にガイドラインの改訂に携わったメンバーで構成された。まず前半で、現在の鎮静に関する世界的情勢を文献的に考察し、鎮静に関する実態調査等が今後必要である等の課題について林が発表した。次いで、鎮静ガイドラインの改訂の要点について、淀川キリスト教病院の池永氏が発表した。本ガイドラインの適応拡大、生命倫理学的妥当性の明確化、鎮静に用いる薬剤の見直し、鎮静の種類毎の具体的な鎮静方法の提示、鎮静のアルゴリズムの作成、治療抵抗性と判断するための対応チェックリストと鎮静についての説明文書例の作成などが改訂のポイントである。
 後半では、「一般診療科における鎮静の現状とガイドラインの活用」と題して、札幌南青洲病院緩和治療科の中島氏がこれまでの一般病院勤務の頃の鎮静に関する現状をSTASに基づいて検討した結果を発表した。病状認識やコミュニケーション、鎮静を開始する前に行うべき治療の評価が難しいこと、薬剤選択の難しさなどを問題点としてあげ、これらの問題は新しいガイドラインで改善される可能性が高いことを発表した。また、「鎮静ガイドラインの普及と今後の課題」と題して一般病棟で活動する緩和ケア認定看護師の立場から、北野病院の鎗野氏がその戸惑いや難しさ、悩みなどについて発表した。最後に「鎮静ガイドラインの臨床倫理」と題して東京大学大学院人文社会系研究科上廣死生学講座の清水氏が現状と今後の課題について発表を行った。鎮静が意識の低下により、苦痛を感じなくさせるという益をもたらすが、人間的生活をできなくなるという点を重大な害と捉えるなか、それを相対的に最善とする倫理的基盤をproportionality原則に則って明確に発表した。
 会場とのディスカッションにおいて、これらの発表に述べられた課題に関して更なる調査、研究が必要であることが明確にされ会を終えた。

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