Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.48
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2010  48
学会印象記
NPO法人高知緩和ケア協会「第9回高知緩和ケア研究発表会」と
「豊かないのち講演会―がん哲学外来―」報告
高知厚生病院  山口 龍彦
 平成22年5月 22日(土)高知城にほど近い高新RKCホールにおいて、毎年恒例となった高知緩和ケア協会による高知緩和ケア研究発表会(午前の部)と豊かないのち講演会(午後の部)が開催された。午前の部の演題は県内3カ所のがん診療連携拠点病院の緩和ケアチームから2題、同じく看護サポートチームから1題、県内に6カ所ある緩和ケア病棟のうちから4題、(以上7題は看護師)高知大学医学部付属病院医師から1題、緩和ケアチーム薬剤師から1題、がん相談窓口を担当するがん看護専門看護師から1題の計10題であった。
 緩和ケアチームからの演題では活動報告や、活動の拡大に障害となっている問題の解決方法、活動の評価のあり方などが話し合われた。緩和ケア病棟からの演題では患者や家族の希望をいかに支えてゆくか、また、緩和ケア病棟で看取ったご遺族が定期的に病棟を訪問して下さるとき、その心情をインタビューするなどの研究があり、活発な討論がなされた。骨転移の痛みに対して「MRガイド下集束超音波治療」を行なった高知大学整形外科からの発表は、世界的にも始まったばかりの将来有望な治療法として注目された。
 午後開催の一般県民を対象とした第15回豊かないのち講演会の講師は順天堂大学の樋野興夫先生、演題は「がん哲学外来」であった。がん哲学というのは、樋野興夫先生の造語であるが、樋野先生が順天堂医院でがん哲学外来を開設して以来、あっという間に全国に知れ渡った。人間は普く死すべき運命のもとにあるが、がんを持って生きることは、そのことを常に意識させられることである。しかし、限られた時間を如何に生きるべきかを相談することのできる公的な場所はこの「がん哲学外来」のほかには存在しない(かも知れない)。樋野先生は、患者の訴えに傾聴しつつ、その方が今一番必要としている言葉を投げかける。「勇ましい高尚なる生涯」「人生いばらの道、にもかかわらず宴会」これができるのは人生哲学を学び続けてきた先生の教養の力であって、やはりそう簡単には誰にでもできることではない。「人間は誰でもその存在には絶対的な価値と意味がある。それが私自身の「根源」です。」という樋野興夫先生の優しさあふれる講演に、教養の大切さを再認識させられた一日であった。

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