Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.48
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2010  48
Journal Club
日本のホスピス・緩和ケア病棟における遺体の処置 (エンゼルケア)
社会保険神戸中央病院 内科 緩和ケア病棟  新城拓也

Shinjo T, Morita T, Miyashita M, Sato K, Tsuneto S, Shima Y, Care for the bodies of deceased cancer inpatients in Japanese palliative care units. J Palliat Med 13(1), 27-31, 2010

【目的】
 日本の病院では、遺体の処置は終末期ケアの一部であると考えられている。日本のがん患者は、病院での死亡が多いにもかかわらず、遺体の処置に関する実証的な研究はほとんどない。よって、この研究の目的は、遺族の考える死後の遺体の処置に関する実際の体験と、さらに好みや考えを明らかにすることである。
【方法】
 日本の95のホスピス・緩和ケア病棟で、死別を体験した遺族に対して、2007年に質問紙調査を行った。
【結果】
 670人の遺族を調査対象とし、492人の質問紙を回収した。(返答率76%)全般的な終末期ケアに対する全般的な改善要求度は、「改善が必要な点が非常にある」1.4%、「改善が必要な点がかなりある」4.3%、「改善が必要な点が少しある」37%、「改善は必要ない」58%であった。遺族のうち9.4%は、病院を出てから、患者の遺体に問題があったと報告しており、何らかの原因で面影が変化した(8.5%)、排泄物や血液で体が汚れた(8%)、体のにおいが気になった(4%) (複数回答可能)であった。遺族の遺体の処置に対する考えは、「手を前で組むように紐で手首をしばる」、「口があかないように顔のまわりに紐をつける」、「遺体を布でくるむ」を好まず、一方で最も好まれる化粧の方法は、「うすく、落ち着いたふんいきのメイク」であった。
【結語】
 遺体の容姿・様相を保つことは、終末期ケアの満足度と関連があった。遺体の処置に対する、考え、好みは時代と共に変化する。よって、文化、宗教観、そして患者や家族の考え、好みを尊重して遺体の処置を含む終末期ケアに行う必要がある。
【コメント】
 日本の病院で、主に看護師によって行われている死後の処置、いわゆる「エンゼルケア」に関しては、広く行われているにも拘らず、国際的なジャーナルに報告がなかった。そして、「エンゼルケア」で行われている行為や、死後の儀式に関しては、宗教的な影響だけでなく、民族的な習俗の影響を強く受けていると報告した。また映画で納棺師の仕事を描いた「おくりびと」で、日本の一般市民にも死後の処置について広く知られるようになり、今後も「エンゼルケア」を技術的に洗練していくことが重要である。この分野で熱心に活動している方々の報告を心待ちにしている。

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