Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.48
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2010  48
Journal Club
どのようながん患者が自宅で亡くなるのか?
ヨーロッパ6ヵ国の死亡個票を用いた調査
東北大学大学院緩和ケア看護学分野  佐藤一樹

Cohen J, Houttekier D, Onwuteaka-Philipsen B, Miccinesi G, Addington-Hall J, Kaasa S, et al. Which patients with cancer die at home? A study of six European countries using death certificate data. J Clin Oncol. 28(13): 2267-73.

【目的】
 欧州の6カ国でのがん患者の在宅死亡率の実態と在宅死亡率の関連要因を明らかにする。
【方法】
 各国の死亡個票のデータを用いた。2003年のがん死亡者に関し、ベルギーの2地域、オランダの全国、ノルウェーの全国、イングランドの全国、ウェールズの全国のデータを、2002年のがん死亡者に関し、イタリアの3地域のデータを得た(合計23.8万名)。死亡個票データに各地域の医療統計等を連結し、多変量ロジスティック回帰分析により在宅死亡の関連要因を検討した。
【結果】
 がん患者の在宅死亡率は、ノルウェー12.7%、イングランド22.1%、ウェールズ22.7%、ベルギー27.9%、イタリア35.8%、オランダ45.4%の順であった。がん患者と非がん患者の比較では、ノルウェーのみ非がん患者の方が、その他の5カ国ではがん患者の方が在宅死亡率が高かった。患者背景での比較では、6ヶ国共通して固形がんである方が在宅死亡率が高かった。年齢では、イタリアのみ若年者の方が、その他の5カ国では高齢者の方が在宅死亡率が高かった。婚姻状況では、データの得られた4カ国で共通して既婚者の方が在宅死亡率が高かった。教育歴では、データの得られた3カ国で共通して学歴が高い方が在宅死亡率が高かった。都市規模では、イングランドとウェールズを除いて田舎の方が在宅死亡率が高かった。地域の病院・ケア施設病床数では、ベルギー・イタリア・ウェールズの3カ国で病床数が多いほど在宅死亡率が低かったが、6ヶ国に共通した傾向はみられなかった。
【考察・結論】
 がん患者の在宅死亡率は国により大きく異なり、各国特有の文化、社会、医療面の要因に影響されていた。例えば、在宅死亡率の最も高かったオランダは、誠実さに価値を置く文化で医師と患者間でも率直な会話が行われ、医療政策では在宅・外来医療を推進し、緩和ケアは在宅や家族を常に強く意識している。一方、ノルウェーでは施設ケアへのアクセスがよく、在宅死亡率は最も低かった。在宅死亡率のばらつきは米国の各州間でもみられ、欧州各国と米国各州の比較によっても在宅死亡率の要因が検討できる。在宅死亡を推進する政策立案時には、国際間比較とともに自国の文化、社会、医療の特徴を考慮する必要がある。
【コメント】
 わが国でのがん患者の在宅死亡率は、2005年の5.7%をピークに減少から増加に転じているが、依然として低い(2008年で7.3%)。終末期在宅医療の推進策の検討には、特に文化、社会、医療制度の似通った国・地域での対策が参考になる可能性が示唆された。

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