Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.48
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2010  48
モーニングセミナー2
がんに伴う消化管閉塞(イレウス)のケアと治療
座長・報告  藤田保健衛生大学医学部 外科・緩和医療学講座  東口 志
 学会二日目の早朝からのセミナーであったが、480名収容の第3会場が立ち見のでるほどの盛況ぶりであり、今回のテーマに対する聴衆の興味の深さに驚かされた。講師の新城拓也先生は、名古屋市立大学医学部ご卒業の新進気鋭の緩和ケア医であり、以前に内科医として三重県の片田舎にある厚生連の地域病院で緩和ケアに目覚めたそうである。三重県出身で、同じように厚生連の関連病院にて在宅緩和ケアを開始した司会者としては、当然表現できない親しみが湧いたことは言うまでもない。
 大きな拍手で迎えられた新城先生は、i-phoneを駆使した遠隔操作でスライドを巧みに操りながら、消化管閉塞についての病因論を展開していく。卵巣がんの腹膜播種による腸閉塞症例の画像を示し、同時に開腹手術中の写真を提示してその差を検証することの有用性を述べた。重要なことは痛みや吐気、嘔吐などの症状を早急に取ってあげることである。そのためには従来より内視鏡的ステント挿入術や、イレウス管および経鼻胃管の挿入、手術による閉塞部位の切除やバイパス術などが行われてきた。いずれも適応の設定と有効性の判定が一様でなく、また疼痛や鼻腔刺激などのやむを得ない合併症や副作用などがあり、加えて手技自体にも多少のリスクが存在する。そこで安全性と有効性の高い薬剤としてオクトレオチド(サンドスタチン)が登場する。他のステロイドや抗コリン剤、各種制吐剤とその作用機序が異なり、オクテレオチドは各種消化液の分泌を強力に抑制するため吐気や嘔吐、腹部膨満感などの症状が改善し、同時に閉塞部位の腫脹が解除されて経口摂取が再開できる場合もある。投与法は、我が国では経静脈投与は認められておらず、一般的には持続皮下注が推奨される。有益性の高い薬剤であるが、適切な輸液・栄養管理を行いながら投与することによって、全く食べることができなかった患者が僅かながらでも経口摂取が可能となることが知られている。患者が本当に食べたい物を提供することが可能となり、そして食を楽しむことが心の緩和にもつながっていくのである。

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