Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.48
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2010  48
シンポジウム2
遺族による緩和ケアの質の評価
─J-HOPE 研究から見えてくるもの─
座長・演者・報告  東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻 緩和   ケア看護学分野
宮下 光令
座長  大阪大学大学院医学系研究科 緩和医療学  恒藤 暁
 本シンポジウムは、日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団および厚生労働省研究班が行ったがん診療連携拠点病院、緩和ケア病棟、在宅ケア施設に対する世界最大規模の遺族調査であるJ-HOPE(Japan Hospice and Palliative Care Evaluation Study)研究に関するものである。J-HOPE研究は2007年から2008年にかけて実施され、56のがん診療連携拠点病院、100の緩和ケア病棟、14の在宅ケア施設が参加した。合計13,181人の遺族に調査が実施され、8,163人(62%)に回答を得た。
  シンポジウムでは、まず宮下が「J-HOPE研究の概要とケアプロセス・アウトカムの評価:と題し、研究計画とメインアウトカムである「ケアプロセスの評価」「アウトカム(望ましい死の達成)」について、現状と今後の課題について述べた。次に三條真紀子氏がメインアウトカムの1つである「遺族の介護経験(介護肯定感や負担感)」「遺族の健康関連QOL」に関する結果を述べた。本研究では緩和ケア病棟の遺族を対象に多くの付帯研究が実施されたが、森田達也氏は「遺族からの見た『望ましいケア」:家族の声をしっかりと聞く』と題し、付帯研究のうち「患者の他者への負担感」「希望を持ちながら心の準備をすること」「経口摂取が出来ない患者へのケア」「予後告知」といった臨床的な課題を取り上げ、遺族の視点からみた終末期がん患者に対する望ましいケアのあり方について述べた。これらの結果を受けて、二見典子氏から「ホスピス・緩和ケア病棟の管理者の立場から」と題し看護師長の立場からのコメント、福地智巴氏から「QOLの維持向上につながる情報提供のあり方とは」と題しMSWの立場からコメントを得た。これらの報告の後には会場と活発な討論が行われた。わが国の遺族調査は世界で最も系統的になされていると考えられ、今後も発展が期待される。
 また、当日会場で日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団が発行した本研究の統括報告書が配布されたが、それぞれの研究が今後の臨床や学術的に有意義なものであり、「遺族の声をしっかりと聞く」ことが、わが国の緩和ケアの質の向上につながることを再認識したシンポジウムであった。

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