Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.48
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2010  48
インターナショナルシンポジウム1
世界各地における地域緩和ケア
座長・報告
帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科  江口 研二
聖路加看護大学  山田 雅子
 大会二日目、9時から2時間半にわたり、イギリス、オーストラリアそして日本における地域緩和ケアについて活発な意見交換がなされた。
 英国・シェフィールド大学のSam H Ahmedzai氏は、ヨーロッパにおける緩和ケアの歴史を15世紀から辿ったあとに、現在シェフィールド大学で先駆的に実践しているComprehensive supportive and palliative careシステムの紹介につなげた。そこでは医療だけでなく多職種が包括的にかかわるケアの重要性が強調された。中でも死亡前約2週間から開始される集中的在宅ケアシステムでは、看護師による24時間滞在型の訪問サービスも含めて提供されているという。同じ時期に在宅ケアの導入を検討し始めるわが国との違いが浮き彫りとなった。氏はまた、45項目からなるSheffield Profile for Assessment and Referral for Care(SPARC)を活用することで、今後高齢化に向うEU各国での緩和ケアに対するニーズ(がん及び非がん患者共)を適切に把握し、対策をとることができるなど、工夫と仕掛けをもって取り組むことの重要性について言及した。
 豪州・メルボルン大学のDavid J Brumley氏は、自国ではがんが死亡原因の2番目であり死亡者の7割が未だ濃厚な医療を受けながら病院で亡くなっている現状から、地域緩和ケアの周知を図ることの重要性について語った。氏は、国が展開しているThe National Palliative Care Programの解説を通して、人口密度が低く、原住民を含む多民族文化を持つ地域での医療の実際について解説した。遠隔地でのカンファレンスを可能にし、緩和ケア・スタンダードや最新の医療情報を閲覧できる情報システム(CARESEARCH palliative care knowledge network)の構築、医薬品へのアクセスのしやすさの推進などが紹介された。 今後死亡者数が倍増するとの予測に、距離や民族を超えた地域における緩和ケアシステムの更なる普及に向けた挑戦の必要性が指摘された。
 両氏は最後に、国立がん研究センターがん対策情報センター加藤雅志氏によるわが国の「緩和ケア普及のための地域プロジェクト(OPTIM)」については、組織的な活動が展開されており素晴らしい、成果が報告されることを心から期待しているとエールを送った。
 各国の共通点として、地域緩和ケアの普及を、高齢化問題を併せ持つ課題として取り組んでいることを痛感したシンポジウムであった。

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