Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.47
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2010  47
書評
「定本 ホスピス・緩和ケア」
柏木哲夫 著
千葉県立保健医療大学健康科学部  安部 能成
 久しぶりにハードカバーの本格的な書籍を取り上げた。B6判で300ページを超えている。著者は日本のホスピス・緩和ケアの創始者の御一人であり、本学会の会長も務められたので、御名前を御存じの方も多いと思われる。
 問題は本書の位置づけである。ホスピス・緩和ケアに関する数多くの著作がある中で、本書はどのような意義をもつものであろうか?
 緩和医療の世界では、オクスフォードの教科書が版を重ねており、昨年、待望の第4版が出たことは記憶に新しい。これに対して、日本には該当するような緩和医療の教科書がない。巻末に資料が付され、そのホスピス・緩和ケアの歴史を考える年表が1945年から2006年の60年余りとなっていること、また、以下に挙げる構成内容からみて、我が国におけるホスピス・緩和ケアの教科書となるべき一冊ではないかと考えられる。
 内容は相当に濃い。第T部−ホスピスケアとの出会い:生い立ち、チームケアとしての「OCDP」、英米でのホスピス遍歴、第U部−ケアの実践と広がり:ホスピス建設までの道のり、淀川キリスト病院での実践を振り返る、日本における緩和ケア病棟の広がり、ホスピス・緩和ケアのネットワーク、第V部−発展と新たな課題:地域密着に動くホスピスの新顔、現場における基本的な問題、「白書」にみるこれからの課題、高齢社会における展望、ユニバーサルなホスピスケアを、第W部−いのちを支えるということ:7つのキーワード HOSPICE、いのちの交わりとしてのコミュニケーション、家族の悲嘆を支える、いのちとは何か、ホスピス・緩和ケア 12の魅力、この後に引用・参考文献がついている。賢明な読者諸氏は、終りに、と題された終章:ホスピスの原点へ回帰を、というファイナルメッセージを見落としてはならないはずである。
 教科書としてみれば、内容の大部分は歴史的事実であり、既に過去のものとなっている。ところが、本書の素晴らしさは温故知新、すなわち、歴史を振り返りながら将来に繋がる提案が随所になされている点にある。
 ホスピス・緩和ケアの教科書と位置付けた際、ほぼ唯一の欠点らしいものは索引がないことであろう。学会発足15年にしてまだ若輩段階にあり、近年になって会員数も急速に増加している今こそ、過去に学び将来に備えるという観点から本書は再読の価値をもつものといえる。


青海社、2006年6月19日発行、2,310円

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