Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.47
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2010  47
Journal Club
がん患者と終末期治療についての話し合いを促進するためのビデオ利用
:無作為比較試験
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野  清水 恵

Use of Video to Facilitate End-of-Life Discussions With Patients With Cancer: A Randomized Controlled Trial

El-Jawahri A, Podgurski L M, Eichler A F, Plotkin S R, Temel J S, Mitchell S L, Chang Y, Barry M J, Volandes, A E. (2010). J Clin Oncol 28(2): 305-310.

【目的】
 がん患者が、終末期にどのようなケアを行うかについての意思決定を行う際の助けとして、「ケアのゴール(goals of care)」について、医師の説明に加えてビデオ映像見せることが有効かどうかを、無作為化介入比較試験を実施し検証する。

【方法】
 マサチューセッツ州の一般病院において悪性神経膠種と診断された50名の外来患者を、対照群と介入群の2つに無作為に分けた。対照群では、「ケアのゴール」についての説明を、医師が口頭のみで説明した。介入群では、口頭説明に加えて「ケアのゴール」の6分間のビデオ映像を見せた。 「ケアのゴール」の説明は、以下の3種類の治療・ケアに関するものであった。
1.延命ケア:延命を目的として、心肺蘇生(CPR)、気管挿管、人工呼吸器などを含めたあらゆる治療・ケアを行う
2.標準ケア:身体、精神機能を維持することを目的として、通常の入院治療、輸液、抗生剤投与など、延命ケア以外の治療を行う
3.安楽ケア:最大限の安楽と苦痛の緩和を目的として、症状緩和のためのケア(緩和ケア)を行う。
 対照群と介入群で、説明前後での終末期ケアに対する選好の変化と、意思決定を行う際の不確かさの程度、終末期ケアについての理解度を比較した。介入群については、ビデオ映像を見た感想についても調査した。

【結果】
 対照群(口頭説明のみ27人)では、説明後、25.9%が延命ケアを、51.9%が標準ケアを、22.2%が安楽ケアを望んだ。介入群(口頭説明+ビデオ23人)では、延命ケアを望んだ人は0人、4.4%が標準ケアを、91.3%が安楽ケアを望み、4.4%がわからないと答え、介入群と比較し、P<0.001で有意な差が見られた。
 意思決定を行う際の不確かさの程度は、介入群で有意に低かった。
 ビデオ映像を見た感想については、介入群の82.6%が“非常に見やすいものであった(very comfort)”と回答し、78.3%が“非常に役に立った”、82.6%が“他の患者にもぜひ薦めたい”と回答した。

【結論】
 口頭説明のみだった対照群と比較して、口頭+ビデオ説明の介入群では、延命ケアよりも安楽ケアを選ぶ患者が多く、意思決定を行う際の不確かさも低くなった。
 ビデオ映像を用いた終末期治療・ケアの説明は、患者にとって受け入れやすいものであり、より確かな情報に基づいた意思決定を引き出し、より質の高い終末期ケアへと導く可能性がある。

【コメント】
 我が国においても、終末期ケアについて患者に説明し、治療・ケア計画について話し合うことは、がん医療においての重要な課題である。我が国の現状では、終末期ケアについてのビデオ映像を説明に使用することは突飛な印象を与えるかもしれない。しかしながら、終末期ケアや緩和ケアがどのようなものなのかを適切にイメージするための補助ツ―ルとしてビデオ映像の導入を実験的に試みることには価値があると思われる。さらに、我が国では、本研究のような終末期ケアについての説明の方法だけでなく、説明や話し合いのタイミングや内容についても確立されていない。よりよい終末期ケアを患者自身が納得して選ぶことができるよう、説明や話し合いについて、適切なタイミング、内容、方法を検討していく必要もあると言える。

Close