Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.47
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2010  47
巻頭言
緩和医療の分野における副作用と相互作用のマネージング
─ 薬剤師職能を生かす ─
日本医科大学付属病院薬剤部  片山 志郎
 がん化学療法では、ガイドラインやエビデンスレベルの高い文献を基にしたレジメンを用いて治療を進めていくことが前提です。このため、並行して緩和医療を追加する場合においては、がん化学療法との薬物相互作用の発現や副作用の増悪の危険性をあらかじめ予測しておかなければなりません。逆に緩和医療を施行中の患者に化学療法を追加するためには、疼痛に関して良好なコントロールを継続させていることが条件となります。
 例えば、モルヒネを使用している患者に対し肺がんの治療にシスプラチンを含むレジメン(GPなど)を使用した場合、シスプラチンがグルクロン酸抱合を抑制するためモルヒネの代謝が遅れることを考慮しなければなりません。また、ペメトレキセド(アリムタR)やメトトレキサート投与中の患者にNSAIDsのイブプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナクなどを追加する場合には、抗がん剤の代謝が遅れるため副作用が強く出る恐れがあります。その他、うつ傾向のあるがん患者に対し、パロキセチンに代表されるSSRIなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬の投与はCYP2D6阻害作用を持つため、オキシコドンとの併用時にはオキシコドンの代謝が遅れる可能性のあることを考慮して投与量の調整に当たる必要があります。さらにモルヒネの代表的な副作用である悪心・嘔吐に対しては、発現する重症度やタイプにより薬剤を変更、もしくは追加する必要がありますが、悪心・嘔吐は抗がん剤の代表的な副作用でもあります。両者とも予防的に制吐剤を投与することが多く、臨床現場においては制吐剤が併用される場合も少なくありません。
 薬剤師はこれらの副作用や相互作用への対処を的確に情報提供することで、継続した痛みの治療をサポートし、がん化学療法を完遂させるサポートをする役割があります。
 このように、薬物相互作用の発現や副作用増悪の危険性を回避することはチームにおける薬剤師の重要な役割のひとつです。終末期となれば感染症や栄養状態の悪化などの症状が並行してくることも稀ではありません。緩和医療だけではなく並行して行われるさまざまな治療に用いられる薬剤の代謝や作用機序を確認し、緩和医療で用いている薬剤との相互作用など確認し情報をチームに伝えることが役割として求められると思います。
 専門職種間によるスペシャリティーの違いの融合こそがチーム医療の存在意義であり、チーム医療が求められている最大の要因であると考えます。

Close