Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.46
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2010  46
書評
「がんを生きる」
佐々木常雄 著
昭和大学腫瘍内科  佐藤 温
 佐々木先生の講演はすでに5回聴講させていただいている。けれどもまだ何度でも何度でも拝聴したい。聴講するたびに自分の中に感動をもって新たな「気づき」をもたらせてくれるから。本書は著者がこれまで講演で一生懸命問いかけてきた大切な思いをひとつひとつ丁寧に、やさしく、そしてときに厳しい言葉で伝えてくれる。“患者さんは「あと3ヶ月の命です」と医師に言われて、どう生きるのでしょうか?人生のどん底に落とされて、患者さんはどう奈落から立ち上がるのでしょう?立ち上がることは、できるのでしょうか?”著者は常に患者の立場に立ち、応援することを誓い、そして患者さんが早く安寧な気持ちに戻れる、心静かに過ごせる術はどこにあるのかを求めて悩み続け、その答えを個々の患者さんの言葉や行動を通して語りかけてくる。
著者である佐々木常雄先生(がん・感染症センター都立駒込病院院長)は、日本のがん薬物療法の基盤を築き上げた誰もが知る大功労者であり、なおかつ現役のoncologistである。先生が看取られた2000人以上の患者さんとは、先生が担当していた患者であり、抗がん剤治療から看取りまで喜びと悲しみをともに過ごしていることが痛いほど伝わってくる。本書では、「患者さん本人に告知をしなかった時代」から、「告知をしても予後を告げない時代」、そして現在の「真実を医師が話し、患者が知る時代」に至るまでの時代の変遷を筆者の豊富な経験を重ねながら、患者さん視線で語りかけてくる。告知される時代になった。本人が決定する時代になった。この時もっとも必要なのは、患者の目線、患者の視点、患者の立場である。“生きるには寿命なんて知らないほうがいい”“「緩和に徹する」という意味は何のことなのでしょう?”現代医療の中に身勝手な医療が隠れているのではないかと指摘する。日本人としての心を重視し、日本人に合った日本独自の医療の在り方を考える必要があると指摘する。さらには、死生観についても切り込んで論じられている。
 最終章“短い命の宣告で心が辛い状況にある方へ、奈落から這い上がる具体的方法”では、「安心できる心」を引き出す術を提示してくれる。本書は私たちがん医療に携わる医療人にとって叱りつけてくれる師であり、優しく包んでくれる親であり、一緒に悩んでくれる仲間となるであろう。是非にではなく、必ず読んでいただきたい。できたら帯付きの本を購入できるといい。そこには満面の笑みで迎えてくれる佐々木先生がおられる。


講談社現代新書2030 2009年12月16日発行 720円

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