Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.46
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2010  46
学会印象記
第33回日本死の臨床研究会年次大会に参加して
船橋市立医療センター 緩和ケア内科  野本靖史
 平成21年11月7日と8日の両日、秋の快晴の名古屋で開催された「第33回 日本死の臨床研究会年次大会」に参加しました。日本死の臨床研究会は第33回と伝統のある会です。20年以上前、私が呼吸器外科医であった頃、千葉大学麻酔科教授であられた水口公信先生から手術中・・・!にこの会・・・の名前を伺いました。死の臨床というびっくりする名前でどきっとしたことを覚えております。数年前から緩和ケアに携わるようになり、今回初めてこの会に参加いたしました。
 今回は佐藤健先生(独立行政法人国立病院機構豊橋医療センター緩和ケア部長)、安藤詳子先生(名古屋大学医学部保健学科看護学専攻教授)を大会長とし、「いのちを見つめ、心を結ぶ、今すべての人と」をテーマに開催されました。学会の内容は、特別講演「おそれない-死をどう支えるか-」(鎌田實先生)、文化講演「物語を生きる人間の『生と死』?つながるいのち,つなげるケア?」(作家・柳田邦男さん)、教育講演「日本人の死について」(M口道成先生)、講演「老いの風景?老いること・死ぬこと・愛すること?」(渡辺哲雄先生)、「健康格差社会-bio-psycho-socialモデルといのち」(近藤克則先生)、シンポジウムでは「ホスピスへの遠い道 その歴史と現在・未来?マザー・エイケンヘッドと岡村昭彦?」・「食といのち」・「地域・在宅における緩和ケア」・「いのちの教育」・「いのちの授業(1限目?3限目)」、市民公開講座「食といのち」(日野原重明先生、料理研究家・辰巳芳子さん)・「がん哲学外来(樋野興夫先生)」と幅広い話題に迫っておりました。また、ランチョンセミナー8題、ワークショップ10題(ミニを含む)、体験講座4題、事例検討16題、一般演題(ポスター)250題、それに市民団体フォーラムまで加わり、興味をそそられるセッションばかりでした。
 これが名古屋国際会議場の14会場を使って2日足らずで開催されました。予め抄録集に参加したいセッションに○印を付けましたが、時間が重なっているものも多く迷いました。また、いざ会場に入ろうとすると、既に満席(立ち見もいっぱい)の状態の会場も多く、参加者の関心の高さが伺えましたが、いくつか壁にもたれながら参加することができました。
 緩和ケアは、わが国のがん医療政策の中で示される重要課題の1つですが、ともすれば患者の身体の疼痛コントロールに主眼が置かれてしまいます。今回「日本死の臨床研究会」に参加して、患者さんとその家族の終末期における様々な心の変化について考えさせられました。一般的な医療とは異なった、医療経済などでは語れない、一人一人に個別に生じる問題で、これに携わるものは、患者とその家族の気持ちを良く理解し、真摯に受けとめ、一緒に考え、できる限り対応していくことが重要であると思います。
 20数年前故水口公信先生から言われた「死の臨床」と言う言葉が初めてわかった気がします。当時は私を含めた外科医はがんの治癒のみを考え、がん患者の身体の痛み、ましてや心の痛みには目を向けていなかった時代です。その中で、水口先生は末期がんの患者さんの元を訪れ、痛みの治療や人生相談にのられていたそうです。死に臨んだ患者さんと死について話し合ったとも聞いています。がん告知もままならなかった当時のわれわれのことを考えるとあらためて水口先生に敬意を表さずにはいられません。全ての医療者が死あるいは臨死の患者とその家族の十分な支えとなれることが望まれます。

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