Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.46
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2010  46
Journal Club
がん患者の支持療法に関する質指標の開発
:The Cancer Quality Assist Project
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野  宮下光令

Lorenz KA, Dy SM, Naeim A, Walling AM, Sanati H, Smith P, Shanman R, Roth CP, Asch SM. Quality Measures for Supportive Cancer Care: The Cancer Quality-ASSIST Project. J Pain Symptom Manage 2009; 37(6): 943-64.

【目的】
患者や医師は症状コントロールをがん患者のケアの最も重要な目的の一つと考える。しかし、がん患者に対する支持療法の質を評価するツールは殆ど存在しない。そこで、本研究では、がん患者の疼痛や疼痛以外の症状、ケア計画などを包括的に評価する質指標(Quality Indicator)のセットを開発することを目的とした。

【方法】
症状の頻度やQOLに関するデータに基づき、臨床家と研究者が疼痛、心理社会的苦痛、呼吸困難感、嘔気嘔吐、倦怠感・食欲不振、治療関連の副作用、情報とケア計画などについて優先順位をつけた。MEDLINEを用いて1997-2007年の英文文献を検索し、インターネットを用いた情報検索も行った。VA Health Services Research and Developmentの方法を用いて、多職種による国際的なパネルでそれぞれの質指標の妥当性と測定可能性を評価した。

【結果】
133の候補のうち、パネルによって92の項目が確定した。内訳は疼痛15、抑うつ5、呼吸困難感8、嘔気嘔吐15、倦怠感・食欲不振13、他の治療関連の副作用23、情報とケア計画13であった。これらの指標のうち、67が入院患者に適用可能と考えられ、81が外来患者、26がスクリーニングや予防、12が診断やアセスメント、20が症状マネージメント、21がフォローアップに適用可能と考えられた。

【結論】
がん患者への質の高い支持療法のプロセスを評価するためのエビデンスに基づいた質指標が作成された。これらの質指標が推奨するケアの遵守状況や質指標が質改善に結び付くかなどについては今後も研究が必要である。

【コメント】
米国ではUCLA/LANDによるACOVEプロジェクトによって高齢者を対象にした診療の質のプロセスを評価する方法が開発されたが、疼痛や終末期ケアに関しては十分ではなかった。本プロジェクトはLANDから支援を受けており、がん患者支持療法バージョンと位置づけられるのかもしれない。日本では厚労省研究班によって同様のがん治療のプロセスを評価する質指標のツール(QI)の開発が行われた(http://qi.ncc.go.jp/index.html)。しかし、緩和ケアに関してはプロセスを評価する項目としてのエビデンスが乏しく、疼痛と意思決定に限ったという経緯がある。主要臓器の治療と異なりエビデンスに基づくガイドラインが整備されていないことが一因であった。また、作成したQIの測定可能性にも改善の余地が見受けられた。ASSISTプロジェクトで作成されたQIは理想的ではあるが、測定可能性という観点から見ると若干困難があるようにも思える。IF文で条件設定されているが、論文で読む以上、条件設定は曖昧である。しかもこのような条件付けをした場合に、診療記録からの測定は非常に困難かつ時間がかかるというのが日本における経験である。今後、測定データが発表されることに期待したい。診療記録から抽出する質指標は、患者に負担を与えることなく評価が可能であり、重要な事項である。わが国でも緩和ケア・支持療法に関するエビデンスに基づいたガイドラインの整備と、それに基づく測定可能性・実施可能性が高く、質の評価として妥当なQIの開発が求められる。

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