Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.46
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2010  46
Journal Club
Improved Pain Resolution in Hospitalized Patients through Targeting of Pain Mismanagement as Medical Error
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野  清水恵

Tomasz R. Okon, MD, Peggy S. Lutz, RN, BSN, and Hong Liang, PhD Marshfield Clinic (T.R.O.), St. Joseph’s Hospital (T.R.O., P.S.L.), and Marshfield Clinic Research Foundation (H.L.), Marshfield, Wisconsin, USA

【背景】
入院患者の重度の疼痛を軽減する対策は不十分なので、入院患者の疼痛マネジメント改善のために新しい対策が必要である。その新しいアプローチとして、疼痛マネジメント不十分を医療ミスとして位置づけ、その医療ミスを防ぐ観点から、疼痛マネジメントの改善策を開発する動きがある(ACT error-prevention model)。

【目的】
「患者の激痛の訴え後120分以内に再アセスメントを行わない」という“医療ミス”を未然に防ぐための行動改善を促す介入を実施、その効果を検証する

【方法】
介入方法:疼痛アセスメント記録を電子化している1施設(St.Josephs Hospital)のICU以外の病棟の看護師を対象に介入を実施。看護師が使用するコンピュータに、患者の激痛の訴えの記録後、65分以内に再アセスメントが記録されない場合にコンピュータ画面に警告が出現し、120分以上経過しても再アセスメントが記録されない場合には“医療ミス”としてカウントされるというシステムを導入した。加えて、参加看護師を対象に、システムの詳細な説明と、「患者の激痛の訴え後、120分以内に再アセスメントを行わない」ことを“医療ミス”と認識するためのセッションを実施した。 アウトカム:
・「患者の激痛の訴え後、120分以内に再アセスメントを行わない」という“医療ミスの発生率
・激痛が解決されるまでの時間
・オピオイドの過剰使用による過鎮静の指標として、ナロキソンの臨時投与状況
上記について、介入によるデータの変化を検証した。

【結果】
2006/1(介入前)、2007/1、/4、/6(介入後)で、の4つの月それぞれで観察された全51619の激痛について分析の対象となった。
・“医療ミス”(再アセスメントの遅れ)の発生率は、介入前では、各病棟での平均±SE:が56.2%±1.4%、介入後の3つの月では、35.8%±0.7%であり、介入後での有意な改善がみられた(P< 0.0001)。
・激痛が解決するまでの時間は、介入前の1か月(2006/1)の中央値が195分、介入後の3つの月(2007/1, /4,/7)のそれぞれの1ヶ月間での中央値が、117分、106分、101分と、介入後で有意に減少していた(P<0.0001)。
・ナロキソン臨時投与も、介入前(平均±SE: 2.69±0.35/月1000人)、介入後(1.48±0.21)と、介入後で有意に減少していた(P=0.0130)。

【結論】
激痛についての再アセスメントの遅れという“医療ミス”を未然に防ぐために、コンピュータを利用して、リアルタイムで警告を行うという介入は、再アセスメントの遅れを減少させ、より安全により早く激痛を軽減させることにつながり、疼痛マネジメントの改善法として有効な手段といえる。

【コメント】
ACT error-prevention modelは、疼痛マネジメントの3要素(疼痛についてのアセスメント、コミュニケーション、治療・対策)において、再アセスメントの遅れや、疼痛に関連したコミュニケーションの欠如などを医療ミスとして定義し、予防しようとするモデルである。 今回の介入のように、電子システムを導入することは困難でも、このモデルを活用した何らかの介入が、疼痛マネジメントの改善へ有効に働く可能性が考えられる。

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