Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.46
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2010  46
Current Insight
一般市民を対象とした緩和ケアに関する教育的介入の長期効果
東京大学大学院 緩和ケア看護学  佐藤一樹

Sato K, Miyashita M, Morita T, Suzuki M. Long-term effects of public education focusing on end-of-life home care, life prolongation treatment, knowledge about pallative care. J Palliat Care. 2009; 25(3): 206-12.

緩和ケアに関する誤解や知識不足は、終末期がん患者に緩和ケアを提供する際のバリアとなる。我々は、東北地方のある市の地域住民を対象に、緩和ケアに関する1時間の講演会を行った。講演会は、地域の保健所主催で2006年度に11回開催し、1回の参加人数は17〜188人(計607名)であった。講演会のテーマは、緩和ケアとは、治療型医療の限界、患者-医師間のコミュニケーション、オピオイド、終末期輸液、大病院信奉、家で死ぬことの意義、終末期在宅療養の実現可能性、終末期在宅療養での地域のリソースであった。講演会の前後で参加者に対して質問紙調査を行い、教育的介入の短期効果を評価した。その結果、がん終末期に最期まで自宅療養できるという認識は9%から34%に増加し、終末期在宅療養の障害、延命治療の希望や在宅での症状緩和、オピオイドの誤解、輸液療法、患者-医療者間のコミュニケーションの問題に関する認識に変化が認められた。
一般市民を対象とした緩和ケアに関する講演会の短期効果が示されたが、長期効果が認められなければ「真の」教育的効果があったとは言えない。そこで我々は、講演会の参加者に対して、講演会前後に行ったものと同様の質問紙を用いた調査を講演会の6ヵ月後に郵送により行った。講演会前後の質問紙に回答した一般市民は595名で、そのうち424名から6ヵ月後の質問紙の有効回答を得た(有効回答率71%)。その結果、がん終末期に最期まで自宅療養できるという認識は12%に減少して元に戻り、オピオイドの誤解など一部の項目で6ヵ月後も改善が認められたものの、その他のほとんどの認識で講演会前と比較して有意差は認められなかった。したがって、1回の講演会では、教育的介入の長期効果はあまり得られないことが示された。

【コメント】
緩和ケアの理念や知識の啓蒙の方法として講演会は最もポピュラーな方法であるが、これまでその長期的な効果は評価されてこなかった。本研究から、従来の大人数を対象とした講義形式の講演会では長期効果はほとんど得られていないことが明らかとなった。例えば、繰り返し介入すること、少人数を対象とすること、年齢別に介入内容を変更すること、講義形式としないことなどといった何らかの工夫が必要であり、今後は成人教育理論などを参考としながら、長期的にも有効な教育方法を検討していく必要がある。

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