Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.45
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2009  45
Journal Club
Good Death Inventory: 遺族の評価による
「日本人の望ましい死」の達成を評価する尺度の開発
東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻成人看護学/緩和ケア看護学
修士課程  清水陽一
 Miyashita M, Morita T, Sato K, Hirai K, Shima Y, Uchitomi Y. Good Death Inventory: A Measure for Evaluating Good Death from the Bereaved Family Member’s Perspective. J Pain Symptom Manage. 2008; 35(5): 486-98.

【目的】
 望ましい死を達成することは、緩和ケアにおける最も重要な目標のひとつである。この研究では、遺族の評価による「日本人の望ましい死」の達成を評価する尺度(GDI)を開発し、その妥当性と信頼性を検証することを目的とした。
【方法】
 地域がん診療連携拠点病院1施設において、一般病棟もしくは緩和ケア病棟で2004年から2006年の間に亡くなった患者の遺族を対象に、無記名自記式調査票を用いて横断研究を行った。
【結果】
 344通の調査票を郵送し有効回答率は57%であった(189名)。再テストは同意があった175通に調査票を郵送し有効回答率は64%であった。共通して重要な領域として「からだや心のつらさが和らげられていること」「望んだ場所で過ごすこと」「希望や楽しみを持って過ごすこと」「医師や看護師を信頼できること」「家族や他人の負担にならないこと」「ご家族やご友人とよい関係でいること」「自分のことは自分で出来ること」「落ち着いた環境で過ごすこと」「ひととして大切にされること」「人生を全うしたと感じられること」の10の領域が同定された。また、個別性がある領域として「できるだけの治療を受けること」「自然なかたちで過ごせること」「伝えた会いことを伝えておけること」「先ざきのことを自分で決められること」「病気や死を意識しないで過ごすこと」「他人に弱った姿を見せないこと」「生きていることに価値を感じられること」「信仰に支えられていること」の8領域が同定された。GDIのCare Evaluation Scaleと全般満足度と相関があり十分な構成概念妥当性を有していた。クロンバックのα係数は、0.79-0.94、全体で0.94、コア10ドメインで0.92、オプショナル8ドメインで0.87であった。級内相関係数は0.44-0.87、全体で0.52、コア10ドメインで0.59、オプショナル8ドメインで0.50であった。さらに、18項目の GDIの短縮版を作成した。各項目の得点とドメインの得点のピアソンの相関係数は0.80-0.97であった。
【結論】
 GDIは遺族の評価による「日本人の望ましい死」の達成を評価する尺度として十分な因子妥当性、構成概念妥当性、内的一貫性、許容可能な再テスト信頼性を持つことが示された。
【コメント】
 終末期がん患者は身体的・精神的な脆弱性から患者自身によってQOLを評価することが困難である。そのため、世界的に遺族による評価が用いられてきた。本研究は日本人の望ましい死の概念化(Miyashita M, Ann Oncol, 2007)に基づき作成された、望ましい死の達成の評価尺度の信頼性と妥当性を検証したものである。この結果、作成された尺度が十分な信頼性と妥当性を有することが明らかになった。今まで日本には遺族用の評価尺度はケアの構造・プロセスを評価するCare Evaluation Scaleしか存在しなかったが、新たにアウトカムを評価する尺度が開発され、一連の遺族調査の評価尺度が揃ったことになる。すでにGDIを用いて、望ましい死の達成の割合に関するがん診療連携拠点病院、緩和ケア病棟、在宅ホスピスに対する全国調査が行われている。ドメインごとに利用することによって介入のエンドポイントとして利用することもできる。今後も実態調査や介入研究のアウトカムとして本尺度の利用が期待されている。

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