Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.45
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2009  45
Journal Club
がん性疼痛治療の実態と質評価:イタリアでの大規模調査の結果から
東京大学大学院 緩和ケア看護学  佐藤一樹
 Apolone G, Corli O, Caraceni A, Negri E, Deandrea S, Montanari M, et al. Pattern and quality of care of cancer pain management. Results from the Cancer Pain Outcome Research Study Group. Br J Cancer. 2009; 100(10): 1566-74.

 Apolone G, Bertetto O, Caraceni A, Corli O, De Conno F, Labianca R, et al. Pain in cancer. An outcome research project to evaluate the epidemiology, the quality and the effects of pain treatment in cancer patients. Health and quality of life outcomes. 2006; 4: 7.

【背景】
 多くの進行がん患者が疼痛を経験している。がん性疼痛治療のガイドラインが公表されているにも関わらず、鎮痛治療は不十分であり、多くの場合オピオイドの不適切な使用が原因である。
【目的】
 がん性疼痛治療の実態の記述と鎮痛治療の質評価を目的とした。
【方法】
 多施設非盲検化前向き非無作為化研究をイタリアで2006年に行った。がん性疼痛を有する進行がん患者を各施設25名ずつ連続抽出した。鎮痛薬処方量、疼痛(BPIで測定)、症状と副作用、QOLなどを前向きに多時点(12週まで)で調査した。鎮痛治療の適切性の評価指標として、WHOによる鎮痛治療分類(4段階)と最も強い疼痛の程度(4段階)を組み合わせたPain Management Index(PMI、表参照)を用い、PMI<0を不十分な鎮痛治療とみなした。
【結果】
 110施設の1801名に調査を実施した。73%が中程度以上の疼痛を有し、61%が強オピオイドを処方されていた。25%が不十分な鎮痛治療であり、多変量解析の結果、施設種別、鎮痛補助薬の使用、新規/継続患者の別が独立した関連要因であった。不十分な鎮痛治療は、ホスピス・鎮痛補助薬あり・継続患者で9.8%と最も少なく、緩和ケア・鎮痛補助薬なし・新規患者で55%と最も多かった。
【結論】
 がん性疼痛を有するがん患者への強オピオイドの使用は不十分であることが示唆された。
【コメント】
 PMIを用いたがん性疼痛治療の質評価は、Cleelandらの米国の外来調査 (NEJM 1994)と同様の方法で、多くの調査で用いられている。がん性疼痛治療の向上やガイドラインの充実にも関わらず、不十分な鎮痛治療はCleelandらの報告の42%から今回の25%と依然として高い。日本でもOkuyamaら(JJCO 2004)の報告などでPMIが用いられているが、多施設調査による代表性の高い対象での実態調査が期待される。

  WHOによる鎮痛治療分類
疼痛の程度 鎮痛薬なし(0) NSAIDs (I) 弱オピオイド(II) 強オピオイド(III)
なし(0) 0 +1 +2 +3
軽度(1-3) -1 0 +1 +2
中程度(4-7) -2 -1 0 +1
強度(8-10) -3 -2 -1 0

Close