Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.45
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2009  45
Journal Club
進行期がん患者に対する看護師主導型の緩和ケア介入の臨床アウトカム
への効果:ENABLE II 無作為化臨床試験プロジェクト
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野  宮下光令
 Bakitas M, Lyons KD, Hegel MT, Balan S, Brokaw FC, Seville J, Hull JG, Li Z, Tosteson TD, Byock IR, Ahles TA. Effects of a Palliative Care Intervention on Clinical Outcomes in Patients With Advanced Cancer The Project ENABLE II Randomized Controlled Trial JAMA. 2009; 302(7): 741-9.

【目的】
 進行期がん患者に対する緩和ケア介入の有効性を検証した無作為化臨床試験は殆どない。本研究では看護師主導型の緩和ケア介入を行い、進行期がん患者のQOL、症状スコア、抑うつ、サービス利用に対する効果を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 無作為化臨床試験を2003年11月から2008年5月にかけて実施した。ニューハンプシャーにある包括的がんセンターとバーモントにあるVAメディカルセンターという地方の2つの病院において、322人の新たに診断された進行期がん患者を対象とした(介入群161名、対象群161名)。
【介入】
 ENABLEプロジェクト(Educate, Nurture, Advise, Before Life Ends)と名付けられた、多要因の心理教育的介入が実施された。介入として上級実践看護師(Advanced Practice Nurse)による4週間の教育セッションと1カ月後のフォローアップが、死亡または研究終了まで実施された。対象群では通常ケアが行われた。
【結論】
 今回のPhase II StudyではOPCCの症状緩和とケアに対する満足度の有効性が示された。外来における専門的緩和ケアの有用性を評価するための無作為化試験による評価が必要である。
【主要評価項目】
 QOLはFACIT for Palliative Careで測定された(スコア範囲0-184)。症状スコアはESASによって測定した(スコア範囲0-900)。抑うつはCES-Dによって測定されいた(スコア範囲0-60)。測定はベースライン、1カ月後、その後3カ月毎に死亡または研究期間終了まで続けられた。
【結果】
 介入効果(介入群と対照群の差:平均(SD))はQOLが4.6(2)であり(P=0.02)であった。症状スコアは-27.8(15)であり(P=0.06)、抑うつは-1.8(0.81)であった(P=0.02)。研究期間中に死亡した患者に関してはQOLが8.6(3.6)であり(P=0.02)、症状スコアが-24.2(20.5)であり(P=0.24)、抑うつが-2.7(1.2)であった(P=0.03)。サービス利用は両群で差がなかった。
【結論】
 通常のケアを受けた群と比較して、通常のケアに加えて看護師主導の身体的、心理社会的、ケアコーディネーションなどの緩和ケアに焦点を当てた介入が行われた群では、QOL、抑うつにたいして良好な結果であった。しかし、症状スコアと在院日数、ICU/ER受診の頻度に関しては有意な差を認めなかった。
【コメント】
 本研究は世界でも数少ない看護師主体の緩和ケア介入研究の結果であり、681人の適格基準該当者から322が参加した。無作為化試験であることから強い内的妥当性を持っている。本研究の特徴は世界でも初めてと思われる国際的なガイドラインや推奨に基づいて介入が実施されたことであり、介入の詳細はPalliat Suport Care(2009; 7(1)75-86)に詳細に記述されている。アウトカムが複数であるため保守的な有意水準が設定されており、全体としては結果が有意ではない。しかし、方法論的な困難が大きいこのような研究で一定の有効性を見出したことは意義があると考えられる。わが国でも国内の医療状況にあった形での看護師主導型の緩和ケア介入プログラムの開発とその評価が求められる。

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