Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.45
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2009  45
モーニングセミナー6

薬剤師にとっての緩和医療

座長・報告  淀川キリスト教病院ホスピス  小宮 幸子
 本セミナーは緩和医療における薬剤師をテーマとした唯一のセッションであったが、薬剤師のみならず医師、看護師等、予定した人数を大幅に超える多くの方が参加され、熱気にあふれたセミナーとなった。
 この分野の第一人者である岡本先生は、はじめに緩和医療の歴史に触れCicely Saundersの言葉を引用して薬物療法の重要性を述べられた。次に症例に基づき薬物療法の問題点を提示し、薬物療法の実際について解説された。特に製剤学的特徴や薬理学的特徴を踏まえた使い分けについては、その根拠を薬剤師の視点からわかりやすく解説されたため、参加者が今後症状コントロール困難な患者に関わる際のヒントになったと思われる。また、放射線化学療法により完全にオピオイドフリーとなった症例の解説は「一度はじめたらやめられない」という誤解に対して説得力のある内容であり、オピオイドに対する誤解を解くのは薬剤師の重要な役割であることを強調された。さらにオピオイドの副作用については、患者にとって最も苦痛な症状の1つである悪心・嘔吐を中心に詳細に解説された。特に岡本先生の研究である「難治性の悪心・嘔吐に対するリスペリドンの効果」については熱心にメモを取る参加者が多く、症状コントロールに難渋した経験をもつ参加者が多いことを実感した。最後はHenri J. M. Nouwen の“心にかける(care)ことは全ての治療の源であり、治療することができないときでも心にかけることはできる”という言葉でまとめられた。われわれ医療従事者には「患者に対して常に何かをしなくてはならない」という気持ちがあるため、治療ができなくなると患者との関わり方に悩む人も少なくない、と指摘したうえで“心にかける”ことがいかに大切かということを印象深く、熱く語られた。
 緩和薬物療法を専門としていない薬剤師にとっても、薬剤師以外の多くの学会参加者にとっても極めて有意義なセミナーであった。

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