Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.45
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2009  45
シンポジウム9

治療法のない難病患者のエンド・オブ・ライフ

座長・報告  淀川キリスト教病院 ホスピス  田村 恵子
座長  大阪大学大学院医学系研究科・医の倫理学  霜田 求
 原因不明で根治療法がない難病患者たちはそもそも生きることに困難を伴うため、これまでエンド・オブ・ライフについて語られることが少なかった。しかし、近年、終末期医療や救急医療における生命維持装置の停止を求める声が「尊厳死」に結びついて強まりつつある。特に、人口呼吸器の取り外しをめぐる問題は、大きな議論を巻き起こしている。このような現状を踏まえて、本シンポジムでは、治療法のない難病患者のなかでも呼吸器装着の装着をめぐり論議されることが多い筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者のエンド・オブ・ライフにおけるケアの在り方の現状と課題を明らかにし、その理解を拡げることを目的とした。
 難波玲子氏は、在宅診療医の立場から、ALS患者の終末期においては患者の苦痛の緩和が最優先されることの認識と方法論の確立が重要であるが、現行の医療保険制度では適応がないことを指摘した。また、医療処置の選択においては患者の人生観・死生観だけでなく、家族員の状況も十分に考慮した決定ができるような支援が必要であると述べた。川口有美子氏は、在宅ALS患者の介護を支援する立場から、患者の約3割が呼吸器を装着している日本においても、人工呼吸器という侵襲的な治療による苦痛の長期化や家族の負担を恐れるあまり、「安楽死」を望みかねない状況があることを述べた。国に対しては早急な介護の社会化の実現を、医療者に対しては人工呼吸器による緩和ケアの方法論の確立を訴えた。濱村陽一氏は、ALS 患者を介護する立場から、ご自身の体験を踏まえて死の恐怖をやわらげる他者としてのホームヘルパーの可能性と制度の充実化の必要性を述べた上で、24時間絶え間なく介護が必要であるALS患者への介護実態を紹介した。
 フロアからは患者や家族が置かれている現状について多くの質問が寄せられ、活発な意見交換が行われた。続いて、ALSの苦痛緩和の方法について話題が進んだが、日本においてはエンド・オブ・ライフの定義がまだ明確でないこともあり、それぞれ参加者の意見を聞くことに留まった。本学会としては難病患者の緩和ケアをテーマとしたシンポジウムは初の試みであり、次へとつながることを期待させる議論ができたと思う。

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