Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.45
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2009  45
シンポジウム7

患者の心に寄り添う 〜緩和医療におけるNBMの観点〜

座長・報告  大阪府立成人病センター心療・緩和科  柏木 雄次郎
座長  大阪大学医学部附属病院 看護部  大野 由美子
 近年、臨床疫学データを重視するEBMが過剰に(曲解も含めて)強調されていますが、本シンポジウムでは3人の演者によって、NBMについて分かりやすく正しい理解を促して頂きました。
 先ず、岸本先生には痛みをめぐる語りをお話し頂き、「病を患者の人生という大きな物語の中で展開する一つの物語と捉え、医学的な診断・治療も医療者側の一つの物語と捉え、両者をすり合わせる中から新たな物語を作り出していくことを治療と捉える」というNBMの基本姿勢を御紹介頂きました。
 次いで、藤井先生には具体的な事例を踏まえて、語りの体をなさない語りへの配慮と、病気を抱えることは「内側から体験される物語」の土台を変えてしまうという観点や、物語の土台となる文化・多層性に開かれた聴き方の重要性などを示して頂きました。
 最後に、斎藤先生にはNBMだけではなくEBMに関しましても、改めて理論的側面を含めた深い理解を促して頂きました。つまり、EBMが「個々の患者のケアにおける臨床判断のために、最良、最新のエビデンスを用いること」という定義にしたがうならば、EBMは決して患者の個別性を無視した冷たい医療ではなく、EBMとNBMは患者中心の医療を実現するための車の両輪であるという事を詳しく教えて頂きました。
 本シンポジウムを通じて、医師の一方的な思い込みによる医療ではなく、「患者中心の医療を目指す」という意味では、「患者から得られる客観的データを(医師の思い込みよりも)重視するEBM」と「患者の主観的な思いを(医師の一方的な思いよりも)重視するNBM」は二項対立的ではなく、自然に融合するものだという事がよく理解できました。さらに、臨床場面だけではなく研究においても、「患者中心の医療」や「患者に導かれる医療」という視点に立てば、多数の患者から得られるRCTも、一人の患者に関する丁寧な事例研究も同等の価値があるという事も再認識できました。

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