Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.45
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2009  45
巻頭言
スキルミックスとチーム医療
済生会横浜市南部病院 薬剤部  加賀谷 肇
 薬剤師は、「患者に顔が見えない」とかつて言われたりしましたが、近年は大学で臨床薬学を学んできた者も増えたことや、社会が求める薬剤師への期待が変ってきたように感じています。具体的には昨年厚生労働省から出された「安心と希望の医療確保ビジョン」に、薬剤師のスキルミックス(Skill Mix、多職種協働)が盛り込まれたことです。医学と並び薬学の学問的歴史は長いが、こと臨床薬学について言えば1968年に、米国薬科大学協会が履修単位の要件に臨床薬学を入れたのが最初です。これは奇しくも1967年にセント・クリストファーホスピスが開設された翌年でした。すなわち緩和医療の歴史ととき同じくして臨床薬学がスタートしたことになります。わが国において薬剤師の直接臨床に関わる業務が、診療報酬として算定できるようになったのは1988年の入院調剤技術基本料(現在の薬剤管理指導業務)からです。薬剤師の仕事はこの20年で大きく変り、調剤や薬品管理などを中心とした物質志向の時代から、患者志向の業務へシフトしてきました。薬剤師への新しい認識を社会から得るためには、何かが変らなければなりません。薬剤師の自助努力は勿論ですが、「患者の医療安全を守るため」、「医療の質に寄与するため」に薬剤師の業務や実務範囲を広げることに積極的になることが必要と感じています。スキルミックスは、1990年代に医師不足、看護師不足に困窮したOECD諸国において、その養成に時間とコストがかかるこれら職種のあり方や機能が議論された結果、生まれた概念です。厚生労働省は深刻化する勤務医不足対策の一環として、医師法に抵触しない範囲で「医師でなくとも可能な業務」を見直し、「医師と他の医療従事者の役割分担の推進」を求めています。一例として、昨年4月の診療報酬改定からメデイカルクラークの導入が認められたことなどが挙げられます。スキルミックスは単なる役割分担ではなく、医療チーム内における権限と責任の委譲を伴いますが、緩和医療の領域では、多職種のチーム内部における職種混合のあり方や職種間の権限委譲・代替、新たな職能の新設なども比較的柔軟に取り入れられるのではないでしょうか。チーム医療の充実を推し進めることは言うまでもなく、医療スタッフの教育・研修体制を整え、質を担保するシステムが構築されれば、患者に対し安心と希望の医療確保と医療サービスの提供ができると思います。スキルミックスが鍵を握っているのではないでしょうか。

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