Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
書評
「看取りのケア指針」
新城拓也監修、岡田正邦・皆本美喜・向井美千代・山田淳子 著
千葉県立保健医療大学健康科学部 リハビリテーション学科  安部能成
 ジャーナルなどに投稿しようとして、先行研究の確認などを目的にしたレヴューから着手することがある。もちろん、その領域の歴史を知ることは重要であるが、他方、緩和ケアは臨床活動であり、その文献は、日常の臨床活動の反映であることが多い。今回取り上げた本書は、サブタイトルにもあるように社会保険神戸中央病院の緩和ケアにおける実践活動に表れた、具体的コミュニケーションを基盤に置いている。けれども、単なる施設活動の報告にとどまらないことは、各章に付されている引用・参考文献数が、和文・英文合わせて40以上にのぼることからもわかる。
 本書は3部構成をとる。第1章 コミュニケーションの基本、では、前半部分で、SPIKESの6文字ごとに具体的な臨床場面を設定し、緩和ケアにおけるコミュニケーションの方法を解説している。後半部分では、その存在には気がついても具体的扱いに困るような、がん患者の実存的な悩みへの対応について、具体的に述べている。第2章 患者や家族とのコミュニケーション、では、前半部分として看護師の立場から、緩和ケアにおける具体的な状況を設定し、それぞれの対応について説明している。また、後半部分では医師の立場から、11項目の看取り場面における患者や家族への対応について説明を加えている。第3章 医療者間のコミュニケーション、は、類書に取り上げられることの少ないテーマである。前半部分では、複数の専門職の共同作業である緩和ケアならではのコミュニケーションの問題を検討し、後半部分では、SPIKESの6文字ごとに具体的なコミュニケーションの解決策を述べている。
 このように本書は、コンパクトな外観に似合わず、臨床のエッセンスが凝縮している。したがって、多忙な臨床現場にあるものにしてみれば、臨床現場で看取りの経験の少ない、医師・看護師が対応に困るような問題を集めて、「先輩医師・看護師が対応事例を示した」緩和ケアにおけるコミュニケーション・マニュアルとなっている。


2007年、日総研
175ページ、2,476円

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