Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
書評
「はじめての質的研究法 医療・看護編」
秋田喜代美 能智正博監修、高橋都 会田薫子編
千葉県立保健医療大学健康科学部
リハビリテーション学科  安部 能
 医療系の学会ではEBM(evidence based medicine)が人口に膾炙されるようになった。ところが、何がエビデンスであるのか、に始まり、具体的なエビデンスの収集方法・解析方法から、量的研究の限界点に至るまで、いくつもの専門書やコンピュータと格闘しながら、結局のところ締め切りに間に合わず、研究発表に至らない経験を持つ臨床家は多いのではないだろうか?
 もちろん、医療・看護領域における研究は、EBMに代表されるような量的研究のみではない。質的研究(qualitative research)に対応する言葉に、量的研究(quantitative research)がある。緩和ケアに従事する者にとって、行動観察やインタビューは臨床場面で身近な存在であろう。今回取り上げた本書は、このような定性的データに基づいた質的研究とは何か、あるいは、質的研究を試みようとする人々を対象に、日本で活躍している研究者による平易な解説である。しかも、初心者のみならず入門者にも心を砕き、前書きで著者も触れているように「質的研究入門書を読む前の手引き書」を意図しており、その流れは一貫しているといえる。
 第1部 はじめて学ぶ人のために、第1章 医療・看護領域における質的研究の意義、第2章 インフォーマントとの関係づくりと倫理的配慮、第3章 科学論文としての質的向上に向けて、第2部 実例から学ぶ質的研究、第4章 実例1:乳がん患者のセクシュアリティ、第5章 実例2:かかりつけ医に求められる条件、第6章 実例3:不妊女性のネガティブサポートにみる質的研究、第7章 実例4:がん医療における「望ましい」死、第8章 実例5:質的研究と死生学、第9章 実例6:日本の看護師のケア提供の在り方、という構成内容をみても、その題材が本学会の発表演題に近いものになっている。巻末には、推薦図書のリストが解説付きであり、重要語句の索引も付いていて、特に初心者には便利である。
 なお、本シリーズは、研究領域の拡大を意図して、今回取り上げた医療・看護編に続き、臨床・社会編、教育・学習編、生涯発達編の4冊が用意されている。


2007年、東京図書
221ページ、2,800円

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