Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
学会印象記
第14回日本緩和医療学会学術集会
医療法人社団 花の谷クリニック  伊藤 真美
 これまでの緩和医療学会ではメインテーマには据えられこなかった分野を含め、私が感心を持った4つのセッションの内容を報告させていただく。
 1日目のメインホールで行われたシンポジウム1「満足できる、質の高いがん性疼痛治療を考える」は、トップバッターの新聞記者・本田麻由美氏による、癌患者の立場からの発言で始まった。疼痛治療をはじめとする緩和医療の治療の初期段階からの実施が、がん対策推進基本計画の重点課題にも関わらず、患者の直面する現状は、分断された緩和ケアであり、“見放された感”は癒えないこと、このままでは、患者側が緩和ケアを見放すことに進むだろうとの厳しいご指摘を、しかりだなあという思いで聞いた。
 一般演題(口演)「地域医療」では、OPTIM (Outreach palliative care Trial of integrated regional model)という「緩和ケア 普及のための地域プロジェクト」に参加している4つの地域からの報告(浜松/森田達也、鶴岡/三原一郎、柏地域/林真子、長崎/白髭豊)を大変興味深く聞いた。会場からも活発な発言が相継いだ。上記シンポジウムで指摘された「分断された緩和ケア」の閉塞感を打開する糸口があるのではと感じた。わが地域にあった形で取り入れるにはどういう方法があるのか、と模索することを期待できる内容であった。
 2日目のシンポジウム7「患者の心に寄り添う〜緩和医療におけるNBMの観点〜」では、岸本寛史氏が「痛みをめぐるさまざま物語」を紹介してNBMの実践的側面から話をされ、藤井光恵氏が「聴き手の側の物語」についての認識の重要性を話された。その後、齋藤清二氏がまずEBMについての概論として、EBMを3つの形に類別して示されたことで、NBMについての理解を深めることができた。緩和医療のアプローチとNBMに漠然と大きな共通項があることを感じていたが、これまでになくすっきり頭に整理された思いがした。
 シンポジウム9「治療法のない難病患者のエンド・オブ・ライフ・ケア」でも、活発な議論が聞かれた。神経内科医として多くの神経難病の看取りをされてきた難波玲子医師から、実例紹介のなかで、神経難病患者の終末期ケアと延命処置選択に関わる多くの問題提起がなされた。日本ALS協会の川口有美子氏は、患者本人や家族、患者会の取り組みがあって、在宅でも呼吸器をつけて一人暮らしが可能になる障害者福祉政策が、東京都では築かれてきている経緯などを話された。
 本学会が、がん末期患者の緩和ケアについてばかりでなく、上記のような様々な疾患に関する問題、そして地域での暮らしを支えていくために解決しなければならない問題を考える場となってきたことは心強いことでもある。今後、今社会に大きな論議を読んでいる尊厳死の問題や、様々な疾患のエンド・オブ・ライフに関わる問題に、本学会から、きちんとメッセージが示されるようになってほしいと思う。これから自身の臨床の場でできる取り組みに、少し糸口がみえたと思うことのできた本学会参加は有意義であった。

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