Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
Journal Club
外来がん化学療法患者の緩和ケアニーズをスクリーニングする
聖隷三方原病院 緩和ケアチーム  藤本 亘史
Morita T, Fujimoto K, Namba M, Sasaki N, Ito T, Yamada C, Ohba A, Hiroyoshi M, Niwa H, Yamada T, Noda T. Support Care Cancer. 2008 Jan;16(1):101-7. Epub 2007 Jul 5.


【目的】
 外来化学療法中の緩和ケアのニーズのある患者を同定し、専門緩和ケアチームへつなげる方法の有用性を評価する。
【方法】
 (1)化学療法開始時に、専門緩和ケアサービスを紹介する、(2)「生活のしやすさに関する質問票」という包括的なスクリーニングツールを使用する、(3)要望に応じて専門緩和ケアサービスを提供する、を行った。
 初回の化学療法を受けるすべての患者が対象となった。日常の業務として、薬剤師が初回の化学療法時に、緩和ケアサービスの役割をパンフレットを用いて説明し、「生活のしやすさに関する質問票」を手渡した。質問票は、毎回の診察時に渡し、主治医または看護師が、診察前に質問票の内容を確認した。患者は、・患者が自発的に緩和ケアチームへの紹介を希望した場合、・スクリーニングの結果主治医が医学的に必要であると判断した場合に専門緩和ケアチームに紹介された。質問票には、患者が最も困っていることを記入する自由記載欄、11の身体症状、全体的な生活の質(Quality of life)、つらさの寒暖計、4つの懸念(治療の意思決定についての支援と情報、経済的な問題、栄養、毎日の活動)、および、専門緩和ケアサービスの希望についての項目、が含まれた(注)。
【結果】
 211名の初回化学療法患者のうち、5名の患者が質問票への回答を拒否した(承諾率98%)。206名の患者から、1000枚の質問票を回収した。欠損値は、2.7%から7.0%であった。206名のうち、10名は主治医が認識している問題のため、38名(18%)が新しく見つかった問題のため緩和ケアチームに紹介された。専門緩和ケアサービスを受けた患者は、全患者の23%であった。頻度の高い症状は、口腔(20%)、不眠(20%)、治療の意思決定(16%)、つらさの寒暖計により同定された精神的苦痛(14%)、倦怠感(9.0%)、食欲不振(8.8%)であった。すべての調査票のうちおよそ半分で、なんらかの問題が報告されていた。
【結論】
 スクリーニングの質問票を用いた専門緩和ケアサービスの導入と要望に応じた緩和ケアサービスの提供は、通常の臨床業務内で実行可能であり、緩和ケアサービスへの紹介を適切な時期に行うことに有用であることが示唆された。一方、頻度の高い症状は疼痛ではなく、精神的負担、口腔、倦怠感・食欲不振であり、これらに対する新しい緩和的介入方法を研究することが患者の求めている緩和ケアという視点から重要である。
【コメント】
 専門緩和ケアサービスは、抗がん治療が有効でなかったときや終末期ケアだけで利用されている場合が多いが、患者・家族が希望するすべての時期にもっとも適切な緩和ケアを提供する体制が望まれる。抗がん治療中は苦痛があっても我慢するではなく、治療中もできる限りの苦痛緩和を図ることが重要である。本研究のように化学療法初回からの緩和ケアスクリーニングは、治療期からの緩和ケアの有効性を広げると共に患者さん・家族のQOL向上のために必要な要素であると考える。

(注)「生活のしやすさに関する質問票」は、a) 聖隷三方原病院で作成したA41枚のオリジナルのもの、b) a)をもとにOPTIM-studyで作成したもの(http://gankanwa.jp)、c) a-b)の経験をもとに在宅ケアのニードを追加して短縮化したもの、の3つを運用しました。a),c)については聖隷三方原病院森田秘書鈴木へ(jmmorita@sis.seirei.or.jp)、b)についてはOPTIMホームページからダウンロードできます。

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