Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
Journal Club
日本の緩和ケア専門施設における神経ブロックの治療効果:多施設調査
聖隷三方原病院 ホスピス  鄭  陽
Tei Y, Morita T, Nakaho T, Takigawa C, Higuchi A, Suga A, Tajima T, Ikenaga M, Higuchi H, Shimoyama N, Fujimoto M. Treatment efficacy of neural blockade in specialized palliative care services in Japan: A multi-center audit survey. J Pain Symptom Manage 2009;36(5):461-467.


【目的】
 日本の複数の緩和ケア病棟と緩和ケアチームにおける、がん関連疼痛への神経ブロックの頻度と効果を明らかにし、また効果が期待される症例の予測因子を探索すること。
【対象・方法】
 多施設後ろ向きaudit 調査。
【結果】
 国内の任意の緩和ケア病棟7施設と緩和ケアチーム5チームの2002-2003年の診療患者3553名のうち神経ブロックを施行したのは3.8%(136例)であった。多かった手技は硬膜外ブロック(84手技)、内臓神経ブロック(24手技)、クモ膜下フェノールブロック(21手技)であった。施行頻度は、緩和ケアチームのほうが緩和ケア病棟よりも、また麻酔科医が主導する施設のほうがそれ以外の専門を有する医師が主導する施設よりも高かったが、著明な差ではなかった。疼痛の強さ(STAS)、performance status、 オピオイド消費量は施行後に有意に減少した。せん妄の頻度に施行前後で有意差は認められなかったが、6例が施行後にせん妄が改善した。副作用は9.2%(15手技)に発生したが一時的であり致命的なものはなかった。生存期間28日以上の群が28日未満の群よりも疼痛の強さが有意に改善した。
【考察】
 今回調査した施設においては有痛がん患者の3.8%に神経ブロックが行なわれており、欧米の報告と同等であった。
 がん関連疼痛に対する神経ブロックは、強い副作用を起こさずに疼痛の強さや、performance status、オピオイド消費量を減じる可能性がある。
 生命予後が長い患者では疼痛の改善の程度が大きかった。早期から介入し全身状態の良い時期に神経ブロックを行うことで、疼痛の改善がより強く得られる可能性がある。
【コメント】
 疼痛はがん患者の最も一般的な苦痛のひとつであり、QOLを著しく害している。85%以上のがん関連疼痛は薬剤でコントロールできるが、それ以外のものではmultidisciplinaryな対応を必要としており、神経ブロックはそのひとつである。日本においてがん患者に対する神経ブロックの頻度や効果を多施設研究したものが今まで見られなかったため、今回の研究を企画した。

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