Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
Journal Club
生の無意味を訴える終末期がん患者を援助する看護師への教育効果:
無作為化比較研究
京都ノートルダム女子大学人間文化研究科  村田 久行
Meaninglessness in Terminally Ill Cancer Patients: A Randomized Controlled Study Morita T, Murata H, Kishi E, Miyashita M, Yamaguchi T, Uchitomi Y; Japanese Spiritual Care Task Force. J Pain Symptom Manage. 2009 Apr;37(4):649-58.


【背景】
 近年の実証研究では、患者の生きる意味を促進することが緩和ケア臨床家の本質的な任務であるとされてる。しかし、生の無意味を訴える終末期がん患者の苦痛を和らげる理論とスキルの習得に特化した臨床家のための研修の効果についての研究はほとんど存在しない。
【目的】
 この研究は、生の無意味を訴える終末期がん患者の苦痛を緩和する理論とスキルの習得に特化した研修の教育効果を明らかにすることを目的としている。
【方法】
 単一介入者による1施設での介入の待機期間中の看護師を対照群(waiting list control)とした無作為化比較試験を行った。受講した看護師(すべて女性)は40名(13〜14名×3グループ) 、平均年齢31±6.4歳、平均臨床経験8.9±5.5年であった。1グループにつき180分×8回のセッション(講義や演習、構造化されたアセスメントシートを用いた実習)を4ヵ月に渡って行った。3ヵ月おきにConfidence and Self-reported practice scales, and the Attitudes toward caring for patients feeling meaningless scale (Willingness to help, Positive appraisal, and Helplessness)、Maslach burnout scaleで評価した。
【結果】
 研修結果は、自信(Confidence)、Self-reported practice scales、援助の意志(Willingness to help)、前向きな評価(Positive appraisal)、無力感(Helplessness)、燃え尽き(Overall burnout)、感情的疲労(emotional exhaustion)、個人的な達成感(personal accomplishment)、仕事に対する満足度(job satisfaction)、FACIT-Spの各項目において十分な有意差をもって効果を示した。また、この研修を有益・とても有益と評価した看護師の割合は、85%(終末期がん患者の生の無意味をケアしていく上での概念を理解することに)、80%(看護師個人の価値観を促進することに)、そして88%(生の無意味を訴える患者へのケアの方法を知ることに)であった。
【考察】
 結果は十分な有意差をもって研修効果を示したが、いくつかの項目において6〜9ヶ月後に研修前の水準にもどっていることから、研修の効果を維持するための定期的な復習や再研修が必要である。また今後はこの研修の効果が患者の苦痛を和らげる結果を検討すべきである。さらに異なる複数の介入者による多施設での追試験がこの研究結果の単一性の限界を超える普遍妥当性を示すであろう。
【コメント】
 終末期がん患者を援助する看護師への研修効果を無作為化比較試験で行った研究である。研修プログラムは、生の無意味を訴える終末期がん患者の苦痛を時間性・関係性・自律性の3次元から解明した理論[村田理論]に基づいて構成されている。研修の効果から患者の生の無意味の苦痛は和らげられていると臨床で看護師は実感しているのだが、それを研究として実証することが今後の課題である。

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