Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
Journal Club
Psychotherapy for depression among incurable
治癒が望めない進行がん患者の抑うつに対する
精神療法の有用性:メタアナリシスによる検討
名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野
名古屋市立大学病院こころの医療センター、緩和ケア部
明智 龍男
Psychotherapy for depression among incurable cancer patients. Akechi T, Okuyama T, Onishi J, Morita T, Furukawa TA. Cochrane Database Syst Rev. 2008 Apr 16;(2):CD005537.


【背景と目的】
 がん患者の不安や抑うつなどの精神症状緩和を目的とした精神療法の有用性を検討した無作為化比較試験は欧米を中心として多数報告されている。しかし、個人精神療法および集団精神療法の有効性がメタアナリシスにより示唆される一方で、系統的レビューの結果では一定した見解は得られていない。これらの結果は、検討に含める研究の内的妥当性を厳しく設定するに従い、効果量(effect size)および有用性を示した研究数が減少する傾向が認められ、内的妥当性の高い無作為化比較試験のみを対象にした場合、通常の精神療法的アプローチで推奨されるものはないと結論づけているものもみられている。以上より、現時点において、がん患者に対する精神療法の有用性に関しては、一定のレベルで支持されるものの、その効果の大きさや臨床的な意義などに関しては未だ一致した結論が得られていない。臨床の現場で頻繁に遭遇する進行がん患者の抑うつに対する精神療法の有用性に関しても実証レベルが明らかでなかったため、我々は、コクラン共同計画の枠組みを用いてメタアナリシスを行った。
【対象と方法】
 18歳以上の治癒が望めない進行がん患者を対象として精神療法の有用性を通常のケアと比較した全ての重要な無作為化比較試験を対象とした。なお、言語バイアスを排除するため、英語以外の文献も対象とした。得られたデータの合成は、random effects modelを用いてstandardized weighted mean difference (SMD)を計算した。解析にはReview Manager 4.2を用いた。詳細なサーチストラテジーや解析方法は原著を参照いただきたい。
【結果】
 適格条件を満たし、データの統合が可能であった研究は6報あり、これらから抽出されたデータを用いてメタアナリシスを行った結果(介入群n=292、対照群n=225)、精神療法の提供は、通常の治療のみに比べて有意に抑うつを改善することが示された(effect size=−0.44 [95%CI=-0.08 to -0.80])。一方、抽出された6報のうち4つの研究が、患者の死まで治療を継続するタイプの支持-表出的精神療法(治療者は精神科医、心理士など)であり、各々1つが認知行動療法、問題解決療法であった。
【コメント】
 今回の検討から、進行がん患者の抑うつ軽減に対して専門家による精神療法は有用であり、中等度程度の効果が期待できることが示された。しかし、実際に行われていた治療技法の多くが長期間にわたって継続的に提供する支持-表出的な精神療法であり、昨今欧米でエビデンスが蓄積されてきている認知行動療法や対人関係療法の有用性に関しては、今後の更なる研究が必要であることが示された。

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