Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
Journal Club
日本における、在宅療養中の進行がん患者・家族のQOL、
デイホスピスのニーズと満足度について
東京大学大学院医学系研究科健康科学看護学専攻  清水 恵
Miyashita M, Misawa T, Abe M, Nakayama Y, Abe K, Kawa M. Quality of life, day hospice needs, and satisfaction of community-dwelling advanced cancer patients and their caregivers in Japan. J Palliat Med. 2008; 11(9): 1203-7.


【目的】
現在わが国では、進行がん患者の在宅緩和ケアサービスは発展途上であり、サービス利用中の患者・家族のQOLは明らかになっていない。また、わが国では近年進行がん患者を対象としたデイホスピスがいくつか設立されたが、患者や家族のデイホスピスに対するニーズや満足度なども明らかになっていない。この研究の目的は、1.在宅緩和ケアサービスやデイホスピスを利用している進行がん患者・家族のQOL明らかにすること、2.在宅緩和ケアサービス利用者のデイホスピスに対するニーズを明らかにすること、3.デイホスピス利用者のデイホスピスに対する満足度を明らかにすることである。
【方法】
デイホスピスや在宅緩和ケアサービスを利用している進行がん患者・家族にアンケートを配布し、直接回収した。
 調査項目は以下のとおりである。1. 健康関連QOL尺度(SF-8)の8項目にて身体的健康(PCS)、精神的健康(MCS)、2.在宅緩和ケアサービスを利用している患者・家族のデイホスピス利用希望と、希望する場合の、デイホスピスに対するニーズ、デイホスピス利用中の患者・家族のデイホスピスに対する満足度
 参加者の背景要因について、在宅緩和ケアサービス利用者とデイホスピス利用者の相違点を分析した。健康関連QOL(PCS、MCS)については、国民標準値との比較を行った。また、在宅緩和ケアサービス利用者のデイホスピス利用希望割合、デイホスピスに対するニーズ、デイホスピス利用者の満足度の単純集計を行った。
【結果・考察】
 57組の患者・家族からの回答が得られた(内、在宅緩和ケアサービス利用者34組、デイホスピス利用者23組)。
 参加者の特徴として、PS(Performance Status)や、いくつかの症状について在宅緩和ケア利用者とデイホスピス利用者とで有意な違いが見られ、デイホスピス利用者は身体機能がよい傾向にあった。
 QOLについては、患者については、在宅緩和ケア、デイホスピス利用者どちらも、国民標準値と比較してPCS,MCSともに有意に低い傾向が見られた。一方家族については、PCSについてのみ有意に低い傾向が示された。現在デイホスピスを利用していない在宅緩和ケアサービス利用者のデイホスピス利用の希望について、患者では44%が、また家族では67%がデイホスピスの利用を希望していた。また、デイホスピスに対するニーズとしては、医療処置、気晴らし、情報提供、家族の休息など多岐にわたっていた。デイホスピス利用者の満足度は全体的に非常に高かった。
【結論】
 本研究はわが国初の進行がん患者のデイホスピスを対象とした研究である。わが国ではデイホスピスはまだ数が限られているが、それらは患者・家族から概ね高い評価を受けている。今後はわが国でも進行がん患者を対象としたデイホスピスの広い普及が必要である。
【コメント】
 本研究の結果、在宅緩和ケアサービスを受ける進行がん患者の家族の身体的QOLが、患者本人と同じように低かったことから、患者、家族双方への健康維持のための支援が重要である。現状では多くの進行がん患者がデイホスピスを利用する場合には、虚弱高齢者や認知症、慢性疾患患者に対するデイホスピスを利用している。しかし、進行がん患者にはそれらとは違ったニーズがあり、近年これらの患者を対象としたデイホスピスが開設されるようになった。しかし、それらはまだ先駆的な活動にとどまっており、全国に普及していない。本研究の結果、進行がん患者や家族の多くはデイホスピス利用を望んでおり、デイホスピスが、緩和ケアを行いながら在宅療養を続けるための重要な助けとなる可能性が今回の研究で示唆された。わが国のがん患者の在宅死亡率は6%程度と低く、在宅療養の阻害因子としては「家族に対する負担」や「急変時の対応への不安」が挙げられている。デイホスピスの普及によって、日中の家族に対する不安を軽減するとともに、情報提供などによって不安を解消することが期待される。今後は在宅療養する進行がん患者に対するデイホスピスの全国的な普及が望まれる。

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