Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
Journal Club
支持療法vs緩和ケア:名称の持つ意味は?
─がんセンターでの医療者調査から
東京大学大学院 緩和ケア看護学  佐藤 一樹
Fadul N, Elsayem A, Palmer JL, Del Fabbro E, Swint K, Li Z, et al. Supportive versus palliative care: What's in a name?: a survey of medical oncologists and midlevel providers at a comprehensive cancer center. Cancer. 2009; 115(9): 2013-21.


【背景】
 緩和ケアの利用は増加したが、その紹介時期は遅い。緩和ケア(pc: palliative care)という名称の持つ否定的なイメージが紹介のバリアとなっていることが先行研究で示唆されている。
【目的】
 緩和ケアと支持療法(sc: supportive care)のそれぞれの名称によるがん患者の緩和ケア紹介への影響を比較し、また、それぞれの名称に対する認識の関連要因を検討する。
【方法】
 MDアンダーソンがんセンターの腫瘍医と上級医療職(高度実践看護師APNと医師助手)をそれぞれ100名ずつ無作為抽出し、電子メールでリクルートしてWebを用いて調査した。個人背景や緩和ケアの経験、患者の紹介時の緩和ケアと支持療法の名称の影響などを尋ねた。
【結果】
 腫瘍医66名と上級医療職74名から回答を得た(応諾率70%)。がんによる症状のある患者をそれぞれの名称のサービスに紹介する可能性の有無は、がん初診時(pc 34%; sc 66%, p<.0001)、対がん治療時(pc 45%; sc 80%, p<.0001)、寛解時(pc 36%; sc 66%, p<.0001)、進行がん治療時(pc 69%; sc 89%, p<.0001)で支持療法の方が有意に高く、終末期(pc 92%; sc 91%, p=.82)では有意差はみられなかった。患者・家族と緩和ケア紹介について話し合う際に用いる名称の選好は、支持療法の方が有意に高かった(pc 19%; sc 57%, p<.0001)。それぞれの名称に対する認識は、患者紹介時のバリアとなる(pc 23%; sc 7%, p<.0001)、ホスピスや終末期と同意語である(pc 57%; sc 15%, p<.0001)、患者や家族の希望を損なう(pc 44%; sc 11%, p<.0001)、抗がん剤の副作用治療と関連する(pc 15%; sc 61%, p<.0001)と緩和ケアの方が否定的イメージは有意に高かった。年齢(p=.82)、性別(p=.35)、緩和ケアの教育経験(p>.99)といった個人背景と名称の選好の間に有意な関連はみとめられなかった。
【結論】
 緩和ケアという名称は、医療職により負担で、患者・家族の希望を損なうと認識されていた。支持療法という名称の方が、初発がん患者や進行がん患者はよりサービスに紹介される可能性が示された。
【コメント】
 緩和ケアに対する否定的イメージを医療者がもたない場合でも、患者・家族にそのような認識が多くある状況では緩和ケア紹介のバリアとなりうる。支持療法のいう名称が好まれた詳細な理由の検討が望まれる。

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