Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
Journal Club
持続性のがん性疼痛を評価するには
「現在の疼痛」と「過去1週間の疼痛」のどちらがよいか。
東京大学成人看護学/緩和ケア看護学  宮下 光令
Shi Q, Wang XS, Mendoza TR, Pandya KJ Cleeland CS. Assessing persistent cancer pain: a comparison of current pain rating and pain recalled from the past week. J Pain Symptom Manage. 2009; 37(2): 168-74.


【目的】
 近年の米国FDAによるガイドラインでは、患者による疼痛や他の症状の評価を、現在の評価がよいか、過去1週間などの思い出しによって評価した方が良いかが問題になっている。そのどちらが患者の疼痛の経験を正しく表現できるかを検討するために、ECOGの1147人の患者のデータの二次分析を行った。
【方法】
 対象は2つの臨床試験に参加した外来における進行期がん患者である。PSは0-1が60%、2が27%、3-4が13%であった。患者はBPIで現在の時点での疼痛を評価し、同様に最悪、平均、最小の疼痛を1週間の思い出しによって評価した(0-11点のNRS)。現在の疼痛の評価と思いだしによる疼痛の評価はt検定で比較した。BPIの「疼痛による生活の支障」の平均点に対し、これらの項目を説明変数として重回帰分析を行った。
【結果】
 患者は現在の疼痛(平均2.9)を思い出しによる最悪(5.6)、平均(4.1)の疼痛より軽度に評価した。思い出しによる最悪の疼痛が最もよく「疼痛による生活の支障」に関連した。
【結論】
 現在の疼痛より、思い出しによる最悪の疼痛で評価したほうが、持続性のがん性疼痛を持つ患者の疼痛の経験と疼痛の身体機能への影響をよく反映している。この結果は臨床でも適用できるだけでなく、臨床試験などにおける疼痛などの患者の自己申告によるエンドポイントの評価時点(想起期間)を検討する際の情報として有用である。
【コメント】
 Cleelandらのグループからの慢性がん性疼痛の評価に関する論文であり、突発痛や侵襲による疼痛などには適用できないことに注意する必要がある。今回の結果は、持続性がん性疼痛の評価には、診察時などのある1時点の評価より1週間の思い出しのほうがよいとことが示された。残された問題は「過去24時間」と「過去1週間」のどちらが適しているかという問題である。一般的には治療の変化や様々な要因の関与があるため、がん性疼痛に関しては「過去1週間」が望ましいと考えられる。詳細な検証は必要かもしれないが、臨床的な側面を考えると「過去1週間」で評価してもそれほど問題ないように思われる。

Close