Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
シンポジウム6

望ましいQOLを実現するための心理的援助とは

座長・報告  名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野
名古屋市立大学病院こころの医療センター、緩和ケア部
明智 龍男
座長・演者・報告  大阪大学コミュニケーションデザイン・センター  平井 啓
 本シンポジウムでは、緩和ケアにおける心理的援助について専門心理職が取り組んでいることについて理解を拡げることを目的とした。各話題提供に先立ち、座長の一人である平井から、緩和ケアの領域における心理学的援助において、患者の望ましいQOLを実現するための多面的な"Good death"を考慮した評価の必要性と、心理学的評価に基づく対策心理学的援助の方法としては、多職種やチームによる非特異的関わりと、専門家による特異的関わり、いわゆる心理療法的な関わりがあることを示した。
 この流れに従って、まず石風呂素子先生が、緩和ケアの対象となる患者について心療内科に直接紹介となる場合と、緩和ケアチームとして関わる場合の2つのパターンについて、評価から実際の介入に至るまでのプロセスを、仮説・検証・アセスメント・仮説の修正・検証の基本的プロセスについて解説された。特に、心理的評価をする際に焦点をあてる部分として、これまでの生きかた、人との接しかた、対処の仕方、精神疾患の有無、行動観察の重要性について指摘された。次に、松向寺真彩子先生からは、心理士が中心となって行っている「がんサポートプログラム」が紹介された。がんサポートプログラムは、がん治療セミナー・サポートグループ・個別のこころの相談の3つからなり、これら3つのプログラムをきっかけとして、緩和ケアチームとして関わりを持ち、多角的なケアを行っていくこと、その際に心理士は主に人と人を繋ぐ「地ならし」をする役割を担うことが示された。最後に、安藤満代先生からは、終末期がん患者の精神的苦悩を対象とした短期回想法について、無作為比較試験の結果から、Spiritual Well-being の上昇、不安や抑うつ感の低下に加え、「望ましい死」を構成する要因の「希望」、「人生の完結感」、「死への準備感」が上昇し、「負担感」は低下するという効果があることが示され、さらに介入の実際と介入を行う際の注意点について心理士の専門性の観点から話題提供された。
 会場は立ち見ができるほど盛況であり、このテーマに対する関心の高さが伺われた。フロアからは多数の質問があり、活発な議論を行うことができ、それを通じてフロアの参加者も、当初目的としていた心理職専門家の働きについてより深い理解を得ることができたのではないかと思われる。

Close