Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.44
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2009  44
シンポジウム3

スピリチュアルケアの支えとなるもの
〜社会・心理・文化的考察〜

座長・報告  聖トマス大学日本グリーフケア研究所  谷山 洋三
座長  NPO法人緩和ケアサポートグループ  河 正子
 緩和ケア・緩和医療の領域では、「スピリチュアルペインとは何か?」「スピリチュアルケアはどうすればいいのか?」という議論が長年続けられている。〜原点から実践へ〜というテーマに則してスピリチュアルケアについて考察するにあたり、医学的枠組みを超えた学際的な視点から、スピリチュアルケアの支えとなるものを探求することを目的とした。
 伊藤高章先生は、緩和ケアに関わる諸専門職のケア言動の重層性について考察し、スピリチュアルケアにおいては正解のない問いかけがあり、自己矛盾・分裂・限界に対峙する弁証法的な言語が用いられると述べた。井上ウィマラ先生は、母子の絆に関する愛着理論から、Family Constellation(生育歴による行動・態度のパターン)が医療スタッフの人間関係に影響を与える点に着目し、また、マインドフルネス瞑想の知見に基づいて、スピリチュアルケアを「死と再生の見守り」「息遣いの見守りの器」として、メタスキル(暗黙知、非言語的な態度や姿勢)の重要性が述べられた。藤井美和先生は、価値観が崩壊しスピリチュアルペインを持つ人のそばに寄り添う人には、死生観を見つめることが大切であり、そして、スピリチュアルケアは技術ではなく、自分の限界を認めた上で、いのちにともに向き合うことだと述べた。
 「関係性の探求」と「限界を認めること」が、3人の先生方の共通点であり、この2つのキーワードに対して、伊藤先生は「言語」、井上先生は「母子関係」、藤井先生は「価値観の見直し」を切り口としていた。これらを、スピリチュアルケアを提供する側の課題として、各自が探求していくことが求められているのではないだろうか。限られた時間の中で、整理し切れなかった点もあるが、人文科学の立場から深い議論ができたと思う。

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