Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.43
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2009  43
施設訪問記
自治医科大学附属病院緩和ケア病棟
千葉県立保健医療大学健康科学部 リハビリテーション学科  安部能成
 上野から関東平野を北上するJR東北本線には自治医大という駅がある。昭和49年に自治医科大学附属病院が開業してから9年後、昭和58年の開業という。駅前から大学病院行のバスに乗って約5分で目的地の附属病院に着いたが、その規模に驚かされた。平成20年現在、1,130床、診療科40科を開設しているから当然であろう。そのロビーも巨大で、案内係がいなければ目的の診療科にはたどり着けないのではないか、と感じられるほどであった。
 ホームページ上に公開されている病院の沿革によれば、平成18年6月に臨床腫瘍科が開設され、11月には緩和ケア科の設置もあり、翌年5月には緩和ケア病棟も開設された(病床数は非公開)。これまでに訪れた多くの大学病院は巨大組織であり、人工的で雑然とした印象が強い。しかし、自治科大学附属病院の緩和ケア病棟は、不思議な安らぎを感じる空間であった。その端的な例が、たいへん機能的で使い勝手の良いトイレが、ベッドからすぐ入れるようにデザインされていることである。多くのホスピス/緩和ケア病棟では、最後まで患者さんが希望されることの多い自力での排泄を可能とするため、使いやすいトイレに苦労されていた。当院のものは一つの参考例になりそうである。入口のドアが、あき易く、かつ、安定している。カーテンのように支持性のないものを廃し、しかもハンドルが縦に長く、握り易い形をしている。
 このような物理的構造は、設計者の思想を表すことが多いが、案の定であった。緩和ケア部の責任者の丹波嘉一郎准教授(写真2向かって左)はカナダのエドモントンに留学され、緩和ケアを学ばれている。そのことを普及するために委員会を組織し、多くの協力者を総理されたマニュアルを2004年2月に初版刊行され、2008年3月には第2版に及んでいる。このようなソフト面が充実しているからこそ、ハード面もより良いものができていると考えられる。同じような外見をしていても、使ってみないと分からないことは多いものである。
 この自治医科大学附属病院緩和ケアマニュアルは、PDF版で初版48ページ、緩和のイロハと名付けられた第2版で70ページというボリュームを持つ。ありがたいことに、ホームページ上で閲覧することもダウンロードして手元に置くこともできるようになっている。大学病院では診療科や講座が多く、緩和ケアのような全人的ケアがしずらいという声を聞くが、ここでは幾分その程度が弱まっているように感じられた。このような、全学的な取り組みに心を砕くスタッフが揃っていることが、その一因であろう。このような取り組みが全学的に広がり、ひいてはその施設で研修された若い医師・看護師をはじめとする医療関係者の知るところとなり、緩和ケアの普及に貢献されることを願ってやまない。

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