Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.43
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2009  43
Journal Club
緩和ケアを受ける患者の尊厳に関連する苦悩を知るための新しい尺度:PDI
東京大学大学院医学系研究科 成人看護学/ 緩和ケア看護学分野  逢坂容子
Harvey Max Chochinov, Thomas Hassard, Susan McClement, Thomas Hack, Linda J. Kristjanson, Mike Halos, Shane Sinclair, and Alison Murray. The Patient Dignity Inventory: A Novel Way of Measuring Dignity-Related Distress in Palliative Care. J Pain Symptom Management. 2008; 36(6):559-571.

【目的】
 終末期患者の尊厳に関連する苦悩を知るための包括的な尺度、PDIを開発すること。
【方法】
 カナダ、オーストラリアの計3施設で緩和ケアプログラムを受けている終末期患者253人を対象に質問紙調査を実施した。質問内容は著者の先行研究から抽出された25項目の質問からなるPDIで、身体的・社会心理的側面、スピリチュアリティ、存在の意義といった尊厳に関連する内容を含んでいた。 尺度開発にあたり、併存妥当性の検討のために症状の評価にはEdmonton Symptom Assessment System (ESAS)、抑うつの評価にはBeck Depression Inventory (BDI)、スピリチュアリティの評価にはthe Functional Assessment of Chronic Illness Therapy―Spiritual Well-Being (FACIT-Sp)などを使用している。
【結果】
  対象者の58%が女性で、平均年齢は69歳、既婚者は54%であった。また、対象者の90%はがん患者で、入院患者が59%、調査時からの平均余命は78日(SE 6.5)であった。 因子分析の結果、構成ドメインは「症状の苦悩」:6項目、「存在に関する苦悩」:6項目、「自律」:3項目、「心の穏やかさ」:3項目、「ソーシャルサポート」:3項目の5因子が抽出された。各ドメインの項目ごとのクロンバックα係数は0.55〜0.82で、尺度全体としてのクロンバックα係数は0.93であった。再テスト信頼性については、ピアソンの積率相関係数はr = 0.85であった。併存妥当性については、各ドメインの総合得点と指標尺度のいくつかの項目間でそれぞれ有意な相関がみられた。
【考察】
 PDIは緩和ケアを必要とする終末期患者の尊厳に関連する苦悩を知るための妥当性・信頼性のある尺度であることが示された。苦悩の原因を明らかにすることは、人の苦しみを理解するために重要であり、この尺度は医療者が日常的に終末期患者の尊厳に関連した苦悩に気づき、尊厳を維持した質の高い終末期ケアを提供する助けとなるにちがいない。
【コメント】
 著者は先行研究で終末期患者の尊厳についての概念モデルを見い出しており、そこから研究を発展させて本研究では終末期患者の尊厳に関連する苦悩の評価尺度を開発した。緩和ケアを必要とする終末期患者のQOLの質の評価はこれまで多く行われてきているが、死を迎える患者が直面する尊厳に関わる苦悩を評価する尺度の開発はこの分野では新しい試みである。

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