Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.43
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2009  43
Journal Club
がん性疼痛に対するモルヒネ速放製剤の使用にあたり就寝前に
2倍量を用いるべきか:二重盲検無作為化クロスオーバー試験の結果
東京大学成人看護学/緩和ケア看護学  宮下光令
Dale O, Piribauer M, Kaasa S, Moksnes K, Knobel H, Klepstad P. A Double-Blind, Randomized, Crossover Comparison Between Single-Dose and Double-Dose Immediate-Release Oral Morphine at Bedtime in Cancer Patients. J Pain Symptom Manage 2009; 37(1): 68-76.

【目的】
 EAPCのガイドラインではがん性疼痛に対するモルヒネ速放製剤の使用に関して、1回量(Single Dose: SD)の4時間ごとの使用ではなく、夜間は就寝前に倍量(Double Dose: DD)の投与をする行うことを推奨している。オープン試験による先行研究ではDDのほうがSDに対して副作用が多いことが報告されている。本研究の目的はDDとSDを二重盲検無作為化クロスオーバー試験により比較し、薬物動態に関しても検討することである。
【方法】
 モルヒネのタイトレーションを行ったのち、介入が行われた。SDでは4時間ごとに投与を行い、DDでは最初に倍量の投与を行ったのちに4時間後にプラセボが投与された。主要評価項目は11ポイントのNRSで測定された夜間の平均疼痛である。副次的評価項目は朝の疼痛、レスキュー使用の頻度、副作用(嘔気、口腔乾燥、疲労感、睡眠の質、夜間覚醒の頻度)と患者の選好である。モルヒネとその代謝産物に関しては液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析によって測定された。19人の患者が試験を完遂した。薬物動態に関しては13人がフォローアップされた。
【結果】
 夜間の平均疼痛に関してはDDの方が統計学的に有意に低い傾向にあった(DD 0.8、SD1.4, P=0.058、平均の差0.5(95%信頼区間0.02-1.0))。同様の傾向は夜間の最大疼痛(P=0.069)、睡眠の質(P=0.077)でも認められた。モルヒネのレスキュー投与が必要だった患者は2人のみだった。患者の選好は9人の患者がDD、6人がSD、4人がどちらでもよいであった。DDの患者はモルヒネおよびM6Gに対してAUCの領域が大きかった。
【結論】
  DDのほうが平均疼痛に関して若干良好ではあったが、0.5という差は臨床的な意味は小さく、両者は臨床的には同等といえる。EAPCのガイドラインに沿ったモルヒネの投与は妥当であり、投与法の選択は患者の選好に基づくことが望ましい。
【コメント】
 モルヒネ速放製剤の夜間倍量投与は臨床的にはよく行われている治療であり、EAPCもそれを推奨している。オピオイドは速放製剤より徐放製剤の使用が主流になっているが、欧州での調査ではまだ多くの患者が速報製剤を利用している。DDに関してはToddらの研究によるオープン無作為化クロスオーバー試験により、夜間や朝の疼痛、副作用が高まると報告されていたため、今回の二重盲検試験が計画された。本研究ではDDでも4時間ごとにプラセボ投与のために起こされているので、DDとSDの完全な比較は困難である。それにもかかわらず、若干DDのほうが患者の選好が高く、平均疼痛も低かったことはDDの有用性を示しているかもしれない。投与期間が短いため、副作用について十分に評価できているかは疑問が残る。本研究は臨床的にある程度有用な試験であるが、Toddらのオープン試験とは矛盾する結果であり、同等性を結論づけるためには、十分にデザインされた非劣性試験などの更なるエビデンスの蓄積が必要と考えられる。

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