Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.42
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2009  42
書評
癌緩和ケアガイド─緩和ケアチームのための疼痛と症状の管理─
Janet L. Abrahm 著
栗原稔 監訳 新明裕子 訳
都立駒込病院  佐々木常雄
 本書には、「緩和ケアチームのための疼痛と症状の管理」という副題がついており、特に痛みについての治療法を書いた本であると思ったのだが、本を開いてみて、私の間違いであった。本書は、これまで日本の緩和医療分野では、臨床医やスタッフが最も教育を受けていない部分、つまり、がん患者と家族の心の問題に対して、患者のいろいろな状況で、どう対応するかについて大きく取り上げているのである。
 第1部では、がん患者とその家族特有の苦悩と、尋ねることがためらわれる問いをどのように扱うかについて、第2部は症状の評価と管理について、患者の最期の数日間の対応も含めて記載されている。我々が、いわば逃げている代替療法についても、必ずしも否定的な態度ではなく、さらには患者が自殺幇助、安楽死を望む場合についても言及している。「患者や家族との関係を強めたい。そして、患者だけでなく、家族のケアにも焦点を広げたいと願う臨床家には特に役立つ」と著者が述べているが、まったくそのとおりである。
 本書を読むにつれ、米国での「良い死」とは何かをたくさんの経験から考え、国情は違っているが、真実を告げて、死を告げて、そうしていながら 日本のように「がん難民」という言葉が聞かれない理由の一端を教わった気がする。
 Robert BuchmanによるHow to break bad news(恒藤 暁監訳「真実を伝える」診断と治療社)の本は、「コミュニカーションスキル」の本であるが、この本は緩和チームとして終末期の患者をどう考えるか、私たちは患者にどのように役立つことが出来るかを考えるのにはとても有用な本であると思う。
 2008年の日本緩和医療学会で優秀演題賞を得た「416人の腫瘍医アンケート」では、患者に悪いニュースを伝える時、「約50%の医師は 負担と感じる。約20%の医師は 辞めたい」と感じたという。その原因は? 忙しく説明時間が十分に取れない、家族から非難されるのではないか、患者が自制心を失うのではないか、患者の希望を失わせるのではないかなどであった。これらの現状を改善するために、実際の米国で緩和チームはどうしているのかを知り、そして、私たちは日本でどうすればよいのかを考える意味で、ぜひ一読だけでなく、気になるところは何回も読み直していただきたい。そして、日本における日本人のための「緩和ケア」の確立を期待し、1日も早く「がん難民」などという言葉がなくなることを期待したい。


上巻、下巻 共に2800円+税
2008年8月 初版 EDIXi出版部 星雲社

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