Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.42
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2009  42
書評
「小児がん─チーム医療とトータル・ケア」
細谷亮太・真鍋淳 著
千葉県がんセンター整形外科  安部能成
 待望の書である。既に著者らは小児がんの専門家として名をなしている。その実力は本書の執筆に際して充分に反映しているようだ。本書は、がんの成り立ちから説き起こし、患者団体の連絡先の紹介に終わる、という構成からもわかるように、本書執筆の段階における小児がんに関連した諸問題をA to Zのように取り上げた内容になっている。これだけの幅広さを僅か200ページ余りの文章にコンパクトにまとめあげることは真の専門家でないと困難である。しかも、子供さんやそのご家族に丁寧に説明をしてこられた経験が、やさしい語り口に表れており、読者にもやさしい書物となっている。その意味で、一般の方々の理解を得る、という著者らの意図は成就したと思われる。
  しかし、決して内容に手抜きはなく、一定の水準を保っており、索引と文献がつけば学術書として俎上にのせることも可能なレベルに仕上がっている。本書の目次を紹介する。はじめに、第1章 小児がんとはどのような病気か、第2章 小児がんの種類と特徴、番外編・生存曲線の読み方、第3章 小児がんの診断と治療法、番外編・検査値の読み方、第4章 標準治療がうまくいかなくなったらどうするか、番外編・思春期・若年成人の急性リンパ性白血病の治療について、第5章 小児がんのトータル・ケア、あとがき、となっている。誠に網羅的である。換言すれば、このままで小児がんの教科書となりうる構成となっている。それどころか、慧眼な読者であれば、本書の題材は小児がんでありながら、「がん」というものへの対応方法の王道が書かれている事に気づくに違いない。実際、骨肉腫、白血病、脳腫瘍などのがんは子供と高齢者に多く、統計学的には正規分布ではなく「ふたこぶラクダ」となることが知られている。高齢化社会を迎え、がん患者の増加が言われている我が国において、小児がんにおける問題提起は、そこに止まらない広がりを持つといえる。ここまで見てくると、本書の出版には、著者らの実力が発揮されたのみならず、編集者の力量も侮れないものであることが明らかとなる。
 緩和医療の立場から本書をみると、欧米先進国と比較して日本で未発達な小児がん患者の緩和医療を考えるヒントが多数散見される。もちろん、第4章の3に、緩和医療、として7ページの記述がある。しかし、本書の200ページにわたり、その行間に緩和ケアのヒントが散在していることに多くの読者は驚かれるに違いない。今後、我が国においても小児がんの緩和ケアが終末期を含んだ形で展開する日が来るであろう。その時、本書の内容が、すべてのスタッフ、関係者の常識となっていることを切望する。同時に、本書に示されたような語り口で、緩和医療に従事する我々も関係者とコミュニケーションできるようになりたいものである。


中公新書1973、2008年、中央公論新社刊
新書版208ページ、760円

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