Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.41
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2008  41
Journal Club
一般病棟と緩和ケア病棟で提供される終末期がん医療の実態と
終末期がん患者のQOL評価との関連:
地域がん診療拠点病院1施設でのカルテ調査と遺族調査から
東京大学大学院 緩和ケア看護学 佐藤一樹
Sato K, Miyashita M, Morita T, Sanjo M, Shima Y, Uchitomi Y. Quality of end-of-life treatment for cancer patients in general wards and the palliative care unit at a regional cancer center in Japan: a retrospective chart review. Support Care Cancer. 2008; 16(2): 113-22.

Miyashita M, Morita T, Sato K, Hirai K, Shima Y, Uchitomi Y. Factors contributing to evaluation of a good death from the bereaved family member’s perspective. Psychooncology. 2008; 17(6): 612-20.


【目的】
 (1)一般病棟と緩和ケア病棟で提供された終末期がん医療の実態を明らかにする。(2)遺族による終末期がん患者のQOL評価と提供された終末期がん医療や患者・遺族背景との関連を検証する。 【方法】 地域がん診療拠点病院1施設の一般病棟(GW)と緩和ケア病棟(PCU)で死亡したがん患者を対象とするカルテ調査とその遺族を対象とする質問紙調査を実施した。カルテ調査では、死亡前48時間以内に提供された医療と患者背景を、遺族質問紙調査では、日本で開発された終末期がん患者のQOL尺度であるGood Death Inventory (GDI)と遺族背景を調査した。
【結果】
 カルテ調査は、一般病棟104名(63%)と緩和ケア病棟201名(83%)の死亡がん患者に対し実施した。DNR指示は両病棟ともほとんど全員に記載され、延命治療の実施は両病棟とも少なかった。輸液療法の実施割合は同程度であったが(GW 88%, PCU 87%, p=.72)、1000ml/日以上の輸液(GW 67%, PCU 10%, p<.001)や持続輸液(GW 83%, PCU 5%, p<.001)は一般病棟の方が多かった。強オピオイドは半数以上に使用され(GW 68%, PCU 92%, p<.001)、一般病棟ではほとんどがモルヒネ(GW 92%, PCU 74%, p<.001)であったのに対し、緩和ケア病棟ではフェンタニルも多く使用された(GW 15%, PCU 42%, p<.001)。鎮静は緩和ケア病棟でより多く実施された(GW 5%, PCU 24%, p<.001)。遺族質問紙調査は、一般病棟43名と緩和ケア病棟122名の死亡がん患者の遺族から回答を得た(有効回答率48%)。GDIの18因子のうち「落ち着いた環境で過ごすこと」「からだや心のつらさが和らげられていること」「ひととして大切にされていること」「自然なかたちで過ごすこと」の4因子で、緩和ケア病棟の方が一般病棟よりも終末期がん患者のQOLが高く評価された。延命治療や死亡直前での化学療法などの積極的治療が阻害要因として、適切な強オピオイド使用が達成要因として終末期がん患者のQOLに関連した。
【結論】
  一般病棟でも延命治療は差し控えられていたが、強オピオイド使用や鎮静などの緩和治療や輸液療法の方法については改善の必要性が示唆された。また、終末期において積極的治療を行わないことや適切な強オピオイドの使用は、終末期がん患者のQOLの維持・向上に関連している可能性が認められた。
【コメント】
 緩和ケア病棟により重篤な症状を抱えた患者が多いバイアスがあるが、一般病棟での終末期がん医療を緩和ケア病棟と比較することにより評価し、具体的な改善点を示している。また、質問紙調査を同時に行う研究デザインにより、終末期がん医療の特徴についてQOLという患者の側にたった視点から検討を加えている。しかし、単施設調査で施設バイアスがあること、関連要因の作用機序に不明な点があることが限界であり、多施設調査でのより妥当な検証が期待される。2007年に実施された大規模遺族調査J-HOPE Studyに引き続き、43施設を対象とするカルテ調査が2008年に実施中であり、多施設データの分析が今後報告される予定である。

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