Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.41
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2008  41
ランチョンセミナー2
終末期患者と家族のこころの理解とその支援
座長・報告 たけべ乳腺クリニック 緩和ケア相談室 磯崎千枝子
 講演は人口・面積等のカナダ情報、広大な麦畑・針葉樹林などのスライドによるカナダ紹介を導入部とした『輝かしき悲しみ(Glorious Sadness)』のタイトルで行われ、アートセラピーの作品、患者さん・ご家族の生の言葉、さまざまな知見を通し、終末期のがん患者さんとそのご家族が、いかなる心理的・社会的・実存的領域の経験をしているのかを説明された。日本とは異なる宗教・文化的な背景をもったカナダでは、表現の仕方や細部での違いはあるにしても、死に向かうという、人間の根源的な問題に関する感覚・感じ方には共通する部分が多いことを参会者が再認識する機会となった。
 整理券より多く1200部用意された資料は完配され、フロアーからの質問もいくつかあり、このテーマへの関心の深さが伺えた。
  演者のJill Taylor-Brown女史はソーシャルワークの学士号、修士号を取得、Cancer Care の患者家族サポートサービス部門のディレクターを務める。また出身校であるManitoba大学で教育に携わるほか、対がん戦略プロジェクト教育委員会委員長、対がん協会がん情報サービスのレビュアーを務めており、国・地域レベルでの活動に基づく講演内容は、がん対策基本法の成立以降急展開している感のあるわが国でタイムリーなものであった。
  社会福祉士、医療ソーシャルワーカー(MSW)である筆者は(前職で)20年近くホスピスの患者さん・ご家族に「寄り添うという対人援助技術」を提供してきた経験から、最後に少々のコメントをさせていただいた。
 講演で示されたスライドの中にあった「まるで、崖から落ちて空中に宙ぶらりんのまま大地に叩きつけられるのを待っているような感じ」は象徴的であり、患者さん・ご家族はこのような不安でアンビバレントな心情・姿を批評・評価・判定することなく、静かに寄り添ってくれる人、サポートしてくれる場を求めておられる。にもかかわらず医療者側が「理想の患者像」「理想の家族像」を求めすぎてはいないだろうか?
 「こちらから(患者の人生に)意味を与えるのは(患者にとって)屈辱的である。患者自身に見出してもらう場を作るのだ」というBrown女史の言葉を引用しつつ、緩和ケア・ホスピスケアにおいては医学モデルから生活モデルへのギアチェンジを、ケアギバー側に求められているのではないか等のコメントに対して、演者及び何名かの参会者から「深く共感する」との言葉があり、緩和ケアネットワーク拡大の意味でも有意義かつ貴重な体験であった。

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