Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.40
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2008  40
Current Insight
J-HOPE study:
日本における過去最大の遺族調査の研究デザインと参加施設の概要
東京大学成人看護学/緩和ケア看護学 宮下光令
Miyashita M, Morita T, Tsuneto S, Sato K, Shima Y. The Japan HOspice and Palliative care Evaluation study (J-HOPE study): Study design and characteristics of participating institutions. Am J Hosp Palliat Med. 2008; 25(3): 223-32.
【目的】
 日本における過去最大の遺族調査であるJ-HOPE studyの研究デザインと参加施設の概要について報告する。
【研究デザイン】
 J-HOPE study はわが国のホスピス・緩和ケア病棟(100施設)および在宅ケア施設(14施設)を対象とした多施設遺族調査である。調査時期は2007年7月であり、調査対象は参加施設において死亡した、がん患者の遺族である。調査票はホスピス・緩和ケア病棟7955人、在宅ケア施設447人に送付された。主な調査項目はケア評価(Care Evaluation Scale)、終末期のQOL(Good Death Inventory)、介護経験(Caregiving Consequence Inventory, SF-8)である。ホスピス・緩和ケア病棟ではランダムに割り当てられた12種類の付帯調査を行った。付帯調査のテーマは(1)ホスピス・緩和ケア病棟への入院を検討する家族に対する望ましいケア、(2)家族の視点から見た有用な緩和ケアシステム、(3)ホスピス・緩和ケア病棟を受診する患者・家族の意思決定モデル、(4)がんで家族を亡くした遺族における複雑性悲嘆、抑うつ、希死念慮の頻度とその関連因子、(5)ホスピス・緩和ケア病棟で近親者を亡くした遺族におけるケアニーズの評価、(6)遺族から見た臨終前後の患者に対する望ましいケア、(7)遺族から見た水分・栄養摂取が低下した患者に対する望ましいケア、(8)遺族から見た終末期がん患者の家族の希望を支え将来に備えるための望ましいケア、(9)遺族から見た終末期がん患者の負担感に対する望ましいケア、(10)遺族から見た終末期がん患者に対する宗教的ケアの必要性と有用性、(11)「患者・家族の希望を支えながら将来に備える」ための余命告知のあり方、(12)遺族から見た死前喘鳴に対する望ましいケア、である。また、在宅ケア施設に関しては(13)在宅療養への移行に関する意思決定モデルの調査を行った。その他にも、わが国のホスピス・緩和ケアの実態に関する調査を行った。
【参加施設の概要】
 施設票の集計の結果、わが国のホスピス・緩和ケア病棟および在宅ケア施設の医療従事者の勤務状況やベッド数、入院患者数、退院患者数などの、ホスピス緩和ケア病棟や在宅ケア施設の構造面(ストラクチャー)の概要、ホスピス・緩和ケア病棟や在宅ケア施設で実施可能な治療、ホスピス・緩和ケア病棟や在宅ケア施設における遺族ケアの実態が明らかになった。緩和ケア病棟で実施可能な治療は経口化学療法が44%、経静脈的化学療法が9%、放射線治療が31%、胸水・腹水穿刺が99%、神経ブロックが68%、代替療法が93%であった。在宅ケア施設で実施可能な治療は経口化学療法が71%、経静脈的化学療法が14%、胸水・腹水穿刺が64%、神経ブロックが29%、代替療法が86%であった。緩和ケア病棟では78%が遺族会を開催し、93%が全て・一部の遺族への手紙の送付を行っており、68%が全て・一部の遺族への電話を行っており、63%が全て・一部の患者の葬儀に参列していた。在宅ケア施設では57%が遺族会を開催し、79%が全て・一部の遺族への手紙の送付を行っており、100%が全て・一部の遺族への電話を行っており、63%が全て・一部の患者の葬儀に参列していた。
【解説】
 本研究ではわが国では過去最大の遺族調査であり、国際的にも最大級の調査であるJ-HOPE studyの研究デザインと参加施設の概要について解説した。調査依頼時点での緩和ケア病棟数は153施設であり、100施設(65%)の構造面での概要や実施可能な治療、遺族ケアの実施状況が把握できたことは貴重な副産物としての情報である。また、在宅ケア施設についてこのような調査は初の試みである。本調査に関しては、2008年1月に参加施設への調査結果のフィードバックを行った。これにより、各施設が自らの施設のケアの改善点を把握し、わが国のホスピス・緩和ケアの質の保証に貢献することが期待される。平成20年7月に開催された、第13回日本緩和医療学会学術集会では、J-HOPE studyの速報が多数発表された。今後も各種学会や詳細な解析を加えた形で学術論文等で成果を公表していく予定である。また、現在、主な調査項目に関して同様の調査を、わが国のがん診療連携拠点病院56施設(約4500人)に対して行っており、メインアウトカムに関しては、がん診療連携拠点病院の結果と合わせて公表される予定である。

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