Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.40
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2008  40
Current Insight
精神症状緩和の均てんに向けて
国立がんセンター中央病院
緩和医療支援チーム・精神科 清水 研
 静岡で行われた学術大会において、緩和ケアチーム活動期の課題と対応というシンポジウムにて発表する機会をいただいた。会場の参加者に、現在の緩和ケアチームの問題点についてアンケート調査を実施し、その場でシンポジストが質問に答えるという試みを行ったが、私への質問で一番多かったのは、「緩和ケアチームに参画する精神科医が足りないが、どうしたらよいか?」というものであった。
 現状の緩和ケア診療加算をどうするかという話はおいて、より患者アウトカムに沿って考えると、がん患者の精神症状をどのように緩和するか、また多くの精神症状の背景にある適応障害、うつ病、せん妄といった精神医学的問題にどのように対応するか」という問題に置き換えられる。この問題に対応するには、患者の苦しみをナラティブなストーリーとして理解、共感することに加え、うつ病やせん妄などの薬物療法の適応となる状態像を、通常の心理反応と弁別する能力が必要となる。また、医療チームの一員としてチーム医療を実践するには、腫瘍学や、身体症状緩和に関する知識もある程度必要であろう。
 上記の様な能力を全て備えた、単なる精神科医や心療内科医ではない「精神腫瘍医」は、がん対策基本法のうねりを受けた啓発活動が奏功し増えつつある実感はあるが、シンポジウムでの指摘の通り必要数にはまだ満たない。ただ、心理職やリエゾン精神専門看護師などのコメディカルスタッフと、それぞれの特徴を生かした連携を模索すれば、より大きな力が発揮できるのではないかと感じている。現在がんセンター中央病院では年間600近くの精神症状コンサルテーションを行っているが、薬物療法が主体ではない介入の場合、精神医学的診断、身体医学の知識を身につけた心理職、リエゾン精神専門看護師が、多くの部分を担っている。さらに、身体症状緩和を主とする緩和ケア医や臨床腫瘍医が、うつ病やせん妄を診断するトレーニングを積めば、切迫した希死念慮や人格障害などの高度な精神医学的問題が関与するケースを除いて、少なくともファーストラインの対応は可能なのではなかろうか。精神腫瘍医がいない施設や在宅緩和ケアで高度な精神医学的対応が必要となる場合、都道府県の拠点となるような施設の精神腫瘍医が何らかの形で相談を受けることも可能かもしれない。
 このような対応方法を個人的にはいろいろと考えるが、まだわが国のモデルとなるものは示されていないと思う。精神症状の多くは見過ごされ、適切な介入がされていないという報告が残念ながら今でも続く。心のケアを含めた緩和ケアの均てんに向けて、職種や専門性の壁を越えて、建設的に考えていかなければならないと思う。

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