Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.40
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2008  40
巻頭言
日本緩和医療学会のあり方
─進化する学会を目指して─
帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科、帝京がんセンター
理事長 江口研二
 日本緩和医療学会は、設立後13年を経た現在、会員数7000人を超える大規模な学会に発展しています。日本のがん緩和医療の質の向上を目指す多職種からなるユニークな学会として非常に重要な役割が課せられています。2年前に成立したがん対策基本法のもとに、H20年春には各都道府県のがん対策推進計画が策定されました。がんによる死亡率を20%低減させること、がん検診受診率を50%にすること、がん患者・家族の療養生活における苦痛を軽減すること等を目標にしています。患者・家族の視点を考慮したがん診療体制が全国350余のがん診療連携拠点病院を核に整備されつつあります。とくに、がん薬物療法及び放射線治療の専門家をふやし、それらの設備や内容を充実させること、および、緩和医療の専門家を増やすこと、地域でのがん相談支援センターを充実させることなどががん対策の目玉になっています。日本緩和医療学会の理事会も積極的に緩和医療体制の整備、専門家の育成などの事業を担ってきました。

 H19年度に学会がおこなってきたことの中で重点項目についてご説明します。

1) 学会の方向性を決める選挙制度の確立
 H19年度に従来の推薦方式による代議員選出を改めて、初めての代議員選挙および理事選挙を実施しました。総務委員会、選挙管理委員会などの尽力により、インターネットを利用した選挙方式を用いて、新しい代議員および理事が選出されました。ホームページ、ニューズレターなどを通じて会員に周知した初回実施の選挙でしたが、投票率、電子投票システムなど、2年後の次回選挙に向けて、修正する課題も指摘されています。また、理事会では、多職種という会員構成の特色等もあり、職種、地域などの選挙単位の明確化も継続審議されています。現実的には、必ずしも選挙制度が健全に機能していない国内学会も散見されます。本学会の選挙制度は、理念を実現しうる適切な仕組みとして運営されるように、学会員皆さんの自覚と支援とをお願いします。

2) 日本緩和医療学会の緩和医療専門医制度の確立
 昨年度、外部委員も含めた専門医制度設立準備委員会は、ハードな日程をこなして、関連学会・団体の関係者を招聘して討議し、それらの意見も考慮して専門医認定制度規約案・細則案および設立準備委員会報告書を作成して解散しました。H20年度は新たな理事会執行部のもとで、専門医制度委員会が発足し、H22年度の専門医認定制度発足を目指して活動し始めました。学会主催の教育体制としては、EPEC-Oトレーナーズワークショップを発展的に解消させ、厚労省委託事業として緩和医療研修指導者講習会を全国で開始、さらに、従来からの学会教育委員会企画の定期教育セミナーなどを継続させ、それらの受講歴を専門医受験資格に反映させるべく協議を重ねています。また今年度中に、規約を作成し、緩和医療教育の認定医療機関の選定などを進めます。専門医制度委員会の動向は極めて加速されるので、是非ホームページなどでの随時公告・通知される内容を見落とさないようにお願いします。

3)編集学術委員会の改組
 新理事会の発足とともに、より機能的な運営体系を維持するために、従来の編集学術委員会を改組して、ニューズレター編集委員会とオンラインジャーナル編集員会を分離しました。前者は安部能成委員長のもとで、よりスピーディな会員への連絡事項などをタイムリーに配信することを目指します。オンラインジャーナルに関しては、小林国彦委員長のもとで、新たにエデイトリアルボードを結成し、本学会機関誌としてさらに学術雑誌の内容を強化する予定です。質の高い機関誌を定期発行していることは専門医制度を有する学会の要件となっています。また英文誌も将来の課題となります。

4)学会運営の上での当面の諸課題
 NPO法人としては学会の予算規模が非常に大規模になってきています。昨年度から財務委員会機能の適正化と財務管理体制の改善が課題となっており、新理事会では田中紀章委員長のもとで、新たに財務機能の確立をはかります。また、昨今の医療者の診療・研究活動における倫理の問題がふたたび社会的に取り上げられています。既に、国内の関連学会では、利益相反ポリシーに関する規程の策定と実施が行われており、本学会でも、斉藤龍生新委員長のもとで、利益相反に関する委員会及び学会倫理委員会の設置を検討しています。利益相反に関する規程は、学会員の研究などを禁止・制限するようなものではなく、研究資金などの透明性を担保するものです。このほか、厚労省委託事業として、教育研修事業以外に、関連団体と共同で緩和医療に関する市民啓発運動(オレンジバルーンプロジェクト)を、内布敦子委員長のもとに前年度に続いて行っています。また厚労省に対して、標榜科としての「緩和医療科(仮)」の要望、日本医学会への加盟の検討、保険・介護診療報酬に関する検討、臨床試験グループの設置などの課題が山積しています。

 ネット環境の普及により、医療系の学会のあり方は急速に変化しつつあります。学会の中でも、各分野について、やる気のある人たちが集まって積極的に次々とアクションを起こしていくことが始まっています。本学会も上記の今年度目標をクリアしていくためには、学会員各人の積極的・主体的な活動が大きな力となるものと確信しています。
10年後、我が国の緩和医療が、どのように変革されるのか、その具体的なビジョンを自分たちの手で実現しようではありませんか。

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